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zoom RSS 濱口さんの『日本の雇用と労働法』も労組にダメだし

<<   作成日時 : 2011/10/01 07:42   >>

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事務所に着くと、日本経済新聞出版社からの宅配便があり、開封すると濱口桂一郎さんからの日経文庫『日本の雇用と労働法』が入っていた。しまった、買ってしまった…と、同時に、すぐお礼の書評を書かなければならない「義務感」が頭をよぎる。1日6本もエネルギッシュにブログを更新する濱口さんと違い、こちらは1日1本と決め、しかも山のように在庫があるが、「水町先生の『労働法入門』はすぐ書いただろうが…」と、周辺(?)からも言われそうで、一言−。とにかく、ありがとうございます。

昨日の濱口さんのブログにもあるように、水町さんの岩波新書とは、だいぶ趣が異なり、日本の雇用システムと労働法という観点から、雇用関係法+労使関係法に絞られている。ジョブ型労使関係法制のメンバーシップ型運用という持論にそって、鋭い切り口で、歴史的にも、なぜ今、こうなっているのか説得していく分かりやすさは、ぜひとも現在の組合役員に読んでもらいたい「必読書」となっている。自分たちの労働組合が、なぜ、このような「組織」なのか、「ルーツ」と法的な立脚性を知ることなしに、活動ができるはずはなく、分厚い労働法や労働運動史に尻込みすることなく、まずこの新書からチャレンジしていただきたい。しかし…今の役員の皆さんは、この本でも難しいと感じてしまうだろうな、と感じてしまう。先日、ある労組の書記長と話していたら、旧総評系のこの労組では、久しくスト権投票などやっておらず、もちろん(!)団体交渉などもない。それどころか、労使協議会もほとんど開かず、会社の労務担当者との事務折衝だけで運営しているという。労務担当者にも元組合役員がおり、労働側から要望せずとも「あ・うん」の呼吸で協約等の改訂も進むという。先日は、組合の考えてもいない内容を、会社から先取りして提案してもらい実に助かったそうで…日本の労組は実に恵まれている。この会社はある外資の支配下にはいったが、世界中で労働組合のあるのは日本だけだといわれる。

便宜供与の原則禁止というが、海外からの労働組合役員は、本社等の中に設置された立派な組合事務所にまず驚く。ある労組本部などは、本社ビルの最上階に設置され、30数名の専従者がいた。ある会社の労働組合は、総務課の中にデスクが設置され、まさに会社組織の一部門となっていた。連合が、一時期、未加盟組合に対し加入勧誘をおこなっていたが、ある大企業の労組は、労働協約で上部団体に加入しない旨協約化されていた。その組合は、会社のローテーションで組合役員につくという。したがって3年以上は組合役員にならない…。会社に入ればユニオンショップのおかげで自動的に労働組合に加入し、労働組合費もチェックオフされる。もし労働組合に入りたくないといったら…大変な騒ぎになる。緊張感をなくしたメンバーシップ型労使関係は、まさに「就職」ではなく「就社」に支えられて、多くの労働組合を骨抜きにした。

もちろん自分の指摘する事態は、東京での、ホワイトカラーや本社機構、トップダウンシステムにおけるトップの実態であり、現場に近ければ「生きている」労働組合は多数あるし、いくつかの地方連合会や地協の中には素晴らしい役員と活動がある。だからこそ、なんとか成り立っているし、未だ春闘でスト権投票をすれば、かなりの高率で批准される(もっとも。実際にやろうとなったらストのやり方を誰も知らない)。しかし、本来職場毎に締結されるべき36協定が、本部段階で締結し、かつてはあった職場団交(交渉)が無くなっている現実は、労働組合の空洞化に拍車をかけている。比例代表選挙の組織内候補に組合員の多数が投票しない現実を、民主党の責任で済ませるわけにはいかない。

日本型雇用システムの「三種の神器」のうち、長期雇用慣行と年功賃金制度が変質し危機にさらされる中で、企業別組合だけが生き残っている「不思議」を、もっと明らかにするのは、こんな実態にさせてしまった我々の責任なのだろうが、濱口さんもすべて判った上で「現実」を「皮肉」にとどめていることに、やはり悩む。「ある時期以降の日本で集団的労使関係法制をフルに活用してきたのは、日本的雇用システムの周縁や外部にある人々でした」(159P)と言われると、事実なだけに、水町さんより、濱口さんの方が、ダメだし感を大きく感じるのは、気のせいだろうか。もっとも、世界的な経済危機の中で、日本が不思議に各国から安心感をもたれるのは、「労使関係」の故かもしれない。

とにかくこの新書を読んで、組合関係者は、深く考え込んでもらいたい。

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