救済命令で判った三一書房での「逆ユ・シ」解雇

早いもので、もう2月が終わり…。一昨日のブログで「学研争議」について記載したが、活字離れの影響もあるのか、出版・印刷関係の争議が相次いでいる。しかも良心的出版物を発刊している明石書店や論叢社でも不当労働行為が相次いでいる。明石書店争議は幸い解決したが、社員を非正規化し、組合員を次々に雇い止めしていく卑劣なやり方をさらに改めさせていかなければならない。そのような出版社争議のひとつである「三一書房争議」で2月24日、東京都労委は「団交応諾の全面救済命令」を交付した。

三一書房という日本でも有名な進歩的出版社で起きた1998年からのロックアウトを含む大争議は、諸方面の努力もあり、2006年にやっと解決できた。しかし争議中に乗り込んできた岡部清社長は、終結後、残された会社資産を全面的私物化しようとして、最もめざわりな労働組合排除へ、一連の不当労働行為を続けてきた。岡部社長は、団交にも出席しないばかりか、会社にも出社せず、ダミー会社をいくつも作りながら、三一の資産をわがものにし続けてきた。多くの著者や出版関係者は、名門「三一書房」による出版活動の存続をねがい、努力してきたが、残念ながら、この都労委命令だけでは紛争は解決しようもない。東京地裁に申し立てている岡部社長に対する損害賠償請求等に期待し、この労委命令はそのサポートとなるだろう。

この都労委「命令書」によれば、岡部清という、その筋(どんな筋なのだろう?)では有名な経営者は、驚くべき理屈とやり方で不当労働行為を行った。Kさんという、現在の三一労組書記長は、第一次争議中にいわばスキャップとしてダミー会社に採用され、仕事をしてきた。争議解決後も、引き続きダミー会社2社の社員として、三一内で仕事を続けてきたが、09年3月に、Kさんは三一労組に加入し、その旨、通告した。以来、岡部社長は、会社に出社していないという。以下、命令書をそのまま記載する。

>4月8日、E社(ダミー会社のひとつ)は、A社長名義でK書記長に対し、「三一書房は組合との間に、会社の従業員以外は組合員とは認めないという趣旨の労働協約を交わしていると伺っています」などとして、Kが組合に加入したことをもって「三一書房に入社したと解さざるを得ず」、E社を「自主的に、自発的に」退職したものと認定し、組合加入日をもって「当会社との雇用関係は自ら打ち切られたと判断」したとして、1)Kが組合加入した3月28日をもって同人を自主退職扱いとする、2)4月20日まで残務処理し、7日以内に健康保険証の返還を求める文書による通知を行うとともに、4月以降のKの賃金の支払いを停止した。(中略)
 4月30日、Kが会社に出社すると、同人が編集業務に使用し、担当している書籍の編集中のデータを保存してあったパソコンが撤去されており、「本日(4月30日)、私物をまとめて、退去して下さい。Kさんは三一書房とは、全く無縁の方です。この席は、三一書房で使うものです。㈱三一書房、代表取締役 岡部清」と記載された紙が机上においてあった。
 

いや、長い(?)労働運動史の中でも、このような「逆ユニオンショップ解雇」は聞いたことはない。さすがに労働委員会の調査でこの解雇は撤回されたそうだが、岡部社長の異様さがこの事実だけでも理解できる。自分の本棚にも三一新書をはじめ、三一書房発刊の書籍はたくさんある。ぜひとも、三一書房の名による意欲的な出版継続を望みたいゆえに、岡部社長の逃亡を許さず、この第二次争議の解決を望む。がんばれ、三一労組! なお、最後に都労委命令の主文等一部を東京都の報道発表資料から掲載しておく(なお、都労委命令がこのように掲載されるケースは少ない)。「不誠実団交を労組法7条2号違反の団交拒否とした」典型の命令かもしれない。しかし、以前は社長の名前はきちんと記載してあったのに…残念!。

>主文
 被申立人三一書房は、申立人組合が、平成21年7月14日付け及び8月19日付けで申し入れた団体交渉について、実質的な交渉を行い得る代表取締役を出席させた上で、組合の質問に対し、回答の根拠となる資料等を示し、あるいは具体的かつ合理的に説明するなどして、誠実に対応しなければならない。

5 判断の要旨 (中略)
(4) 不当労働行為の成否について
 団体交渉における交渉員は、会社としての意思決定を要し、団体交渉の場で唐突に質問されても即答できない事態はあり得る。しかし、本件でもそうであるように、団体交渉の議題等があらかじめ通知されれば、使用者側は、団体交渉に向けて事前の打合せ等を行い、組合の要求に対して、会社としての考え方、方針等について、根拠を示して具体的な回答ができるよう準備すべきである。
 会社側交渉担当者として出席した常務Y2は、X1の社会保険の被保険者資格の回復手続が遅れた理由については、十分な説明を行わず、あるいは事前の準備不足のまま団体交渉に臨み、パソコンの撤去、電話等の転送先等については、当然に知っていると考えられる事項についても、知らないと答えたり、仮に知らないとしても、その確認をとろうとしなかった。また、X1の今後の仕事について、常務Y2は関与していないと述べるのみで、実質的決定権者の意向を確認しようともしていない。さらに、会社の経営状況が分かる資料の提出要求については、これを提示できない理由について説明せず、また、これに代わる具体的な説明もしておらず、労働債権の確認については、それを認めることができない具体的な理由を何ら示さなかったのである。
 本件各団体交渉におけるような常務Y2に任せただけの対応では、実質的な交渉となり得ない状況があるにもかかわらず、会社は適切な対応を何らとっていなかったということができる。
 したがって、本件各団体交渉における会社の対応は、団体交渉議題について労働組合との合意達成の可能性を模索するというには程遠く、単に形式的にのみ団体交渉を行ったものであり、団体交渉を誠実に行ったものとは到底評価することができず、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(5) 救済方法について
 社長Y1は、体調の不良を理由に組合との団体交渉にも出席せず、当委員会の手続にも参加していないが、22年1月18日以前に、社長Y1とX2とが組合と会社との間の諸般の問題解決のために折衝を持ったこと、常務Y2は、社長Y1と渋谷の喫茶店で打合せをしたり、団体交渉について社長Y1と相談したり、あるいは役員会議を開いたりしていること等、社長Y1は、会社の業務に従事している事実が認められ、会社の業務執行が全くできない状態にはないとみることができる。また、本件各団体交渉は、実質的に会社を経営してきた社長Y1が、自らは団体交渉に出席せず、実質的権限を持たず社長Y1の指示に従ってきたにすぎない常務Y2に形式的な団体交渉を行わせたことによって引き起こされたものとみるのが相当である。
 したがって、組合の要求に対する回答及び団体交渉への対応等に係る会社の意思決定がなされ、内容のある誠実で実質的な交渉が行われるためには、社長Y1が団体交渉に出席することが必要であり、また、組合の質問に対しては、回答の根拠となる資料等を示し、あるいは具体的かつ合理的に説明すべきであると考えられることから、主文のとおり命ずることとする


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