独善過ぎた菅直人という首相の終わりに

あの海江田が(大学同期で、一応「友人」ゆえに個人的に呼び捨ての関係ゆえ、失礼!)、一歩リードしているという。しかし、どうせ第1回で過半数を取れるわけが無く、決選投票に持ち込まれる。そうすると、現在は支持していなくても、最終的に誰に乗るかで決まる。つまり、2位以内に入ることを前提として、最後の選択が問われる。勝負は、記者クラブでの5人揃っての会見及び今日の共同討論会における政策表明といわれるが、さて…? 昔の派閥であれば親分の権威があり、同一歩調がありえた。そこにはカネと役職、選挙の力学が働いた。しかし、そんな工作も力学もできる権力者はほとんどいない。逆に、その工作ができる者が多い陣営が勝てる。

当初、リードしているといわれた前原候補は、急速に低下しつつある。外国人献金問題など、仙石氏がついていながら脇が甘すぎる。たとえ総理になってももたないと思われる。読売新聞は「26日、前原陣営が国会内で開いた決起集会。300人収容できる大会議室に現れた国会議員は40人を切った。仙谷由人代表代行(官房副長官)や前原氏が、菅政権の中枢を担いながら、最後は『反菅』に転じたことが、党内の反発を招いているとの見方が強い」と報じた。もっとも、誰がなっても短期かもしれない。小沢派の集会では、海江田支持を決めても、ほとんど熱気がなく、「今回は海江田だが、1年後は小沢総理だ」との声でまとまったという。

友人だが、政治家としての海江田はほとんど評価できない。それ以上に知りすぎているゆえにここに書けない話がたくさん有りすぎる。それでも、個人的に信頼できると思われる議員が何人か海江田支持にまわっている。支持というよりも、別な流れがあるのかもしれない。とにかく明日には決まるという、この超短期決戦は、民主党という政党と政治の「妙」であり、「劣化」現象を如実に現している。実は誰がなっても同じなのかもしれない。

40年ほど前の週刊誌記者時代に毎週、国会や議員会館を訪れ、実に多くの政治家と会った。後藤田さんなどすごい迫力があったことを強く記憶している。しかし、以来、会った政治家は数百人いるが、今や誰一人そんなオーラを発する政治家はいない。そして酒を共にしながらも、オーラではなく、異常なまでの権力欲を感じたのが菅直人氏だった。そんな総理大臣の退任に捧げられた各紙のコラムを興味深いゆえに紹介する。

朝日新聞「天声人語」 2011年8月27日
 毎年いまごろ、「夏休み最後の週末」がニュースになる。じりじり照る太陽、陰影濃い日々は、それだけでどこか非日常のにおいがある。今年は雨がちだが、晩夏の光は胸に一抹の感傷を引く▼〈泉の底に一本の匙(さじ)夏了(おわ)る〉飯島晴子。森のキャンプ場に湧く泉だろうか。にぎやかな声はもう消え、誰かが忘れていったスプーンが水底にひとつ。呼びさまされる光景が、烈(はげ)しかった季節の終わりを告げる▼さて、この人も、烈しかった季節を過ぎて、後ろ姿に秋風が吹く。菅首相がきのう、正式に辞任を表明した。短命だったが、「最後の粘り」もあって、在任は小泉後の5人のうちでは最も長い。良くも悪くも、戦後最悪の非常時の宰相として名を残そう▼ここに来て、「すっかり脂っ気が抜けた」が周囲の評らしい。あれは国民新党の亀井さんだったか、夏前に「(菅さんは)秋風の吹くころお遍路に旅立てる」と言っていた。見通しは、良いところをついていた▼菅さんが政治の「泉」に残した一本の匙は、「脱原発依存」だろう。これで四面楚歌(しめんそか)は極まったが、共感する人も多かった。水底から拾い上げる後継首相はいようか。水を濁してごまかすなら、離れる支持も多かろう▼もう一つお手柄を挙げれば、与野党乱戦の「菅おろし」を通じて、政治の貧相を改めて周知させたことか。何とも皮肉な「功」を残して夏とともに去る。かくて初秋の風物詩と揶揄(やゆ)された首相交代が、2年ぶりに復活する。地位の軽さはいよいよ極まる。

読売新聞「編集手帳」 8月27日 
 秋の心で〈愁〉、心に非(あら)ずで〈悲〉…いつぞや、「心」を含む漢字をいくつか小欄で取り上げた。土用の丑(うし)にちなみ、菅首相に似合う字として蒲(かば)焼きの串に心、〈患〉を挙げたのをご記憶の方もあろう◆居座りによる外交の停滞を国家の患いに喩(たと)えたつもりだが、読者の方からお便りを頂いた。〈患〉よりも〈忌〉が似合う、とおっしゃる。己(おのれ)が、己がのパフォーマンスこそ忌むべきものだと。言われてみればなるほど、思い当たる言動が少なくない◆原発事故対応のヤマ場に官邸を留守にした現地視察、然(しか)り。引きずり降ろされる形で辞めたくないメンツ優先の居座り、然り。電撃発表の向こう受けを狙って閣内の意思疎通を軽んじ、公言したエネルギー政策の基本方針が一夜にして「個人の見解」にしぼんだ醜態、また然り◆民主党代表選がきょう告示される。誰が“ポスト菅”の重責を担うにしても、〈忌〉の一字は受け継いではなるまい。部首の「心」は名称を「したごころ」という。票欲しさに、信念を曲げて党内実力者にすり寄る下心も忌むべきものの一つだろう◆〈志〉に燃える新代表の登場を待つ。

毎日新聞「余録」菅首相退陣と後継選び 8月27日
 その昔、太平洋のポリネシアのある部族の王は思うように身動きもできなかった。なぜなら王が持つ呪力(マナ)が強すぎて、マナの少ない民に触れると生命を脅かすことを恐れたからだ。支配者は常人と隔絶したマナの持ち主と信じられた▲「日本大百科全書」の「マナ」の項目で知った話だが、このマナ、もともとメラネシア諸島で人や物に宿る超自然的力を指す言葉として欧米に紹介されたのは以前の小欄でも触れた。戦士が敵に打ち勝つのも彼の腕力によるのではなく、マナを持っているからなのだ▲さて太平洋も西端の列島の支配者にあっては、もともと乏しかったマナをまたもたちまち消尽しての交代だ。菅直人首相は自らの退陣条件とした特例公債法と再生可能エネルギー法の成立を受けて、正式に退陣を表明した▲思えばわずか5年に満たぬ間に自民党の3人、民主党の2人が政権担当者としてのマナを使い果たしてしまったこの国の政治だ。「やるべきことはやった」と菅首相は胸を張るが、打ち上げた看板政策は次々に宙に消え、震災の対応も遅れが目についたのは否めない▲ならば気になるのは後継の党代表選に出馬する面々のマナのほどだが、どう見ても触れて危険な顔ぶれとは思えない。何より代表選の場外の人物から放たれる呪力の下での数合わせに右往左往する後継選びだ。はなから国の指導者としての識見や経綸(けいりん)は問題外らしい▲民主党だけではない。政治全体が国を統治するのに欠かせぬマナを失いつつあることをうかがわせるこの間の成り行きだ。代表選に票を投ずる政治家は心底そのことにおそれおののいてほしい。
毎日新聞 2011年8月27日 0時13分

東京新聞「筆洗」 8月27日
 脚韻を踏んだ<Deeds(ディーズ),not(ノット) wor(ワー)ds(ズ)>という英語の諺(ことわざ)は、そのまま訳せば「行動を、言葉ではなく」、こなれた日本語なら「不言実行」だろう。言葉より行動を評価する点、洋の東西を問わないようだ▼さて、菅首相が昨日、正式に退陣表明した。思い起こせば、昨秋の内閣改造の時、菅さんは宣言したものだ。「『有言実行』内閣を目指す」。社会保障と税の一体改革や再生エネルギー拡充に一定の道筋をつけるなど無論、「実行」がなかったとはいわない▼だが、全体とすれば、目立ったのは「有言」の方。それゆえ、何を言っても「思いつき」と誹(そし)られたが、世論調査など見れば、その「言葉」、即(すなわ)ち、主張のある部分は国民に相当程度支持されていた▼分けても、首相として言明した「脱原発」は特筆してよい。ただ、それも結局、「個人の考え」にとどまり、国の施策にまでまとめ上げる「行動」は伴わなかった▼既に何人も名乗りを上げている後継レース。実際に話をまとめる「行動」こそ問われるとみるゆえか、菅さんが対立した党の実力者や野党にすり寄る動きが目につく。ところが、脱原発については明確な「言葉」が聞こえてこない▼「主張○、実行力×」の菅さんの代わりが「実行力○、主張×」の人では元も子もない。あの諺をもじるなら、求めるのは<言葉を(ワーズ)、そして(アンド)行動を(ディーズ)>である。

北海道新聞「卓上四季」 8月26日 
弔鐘昨年6月のこと。ドイツの全国向けラジオでは、アナウンサーがしきりに「カーン」「カーン」と連呼していたそうだ▼カーンとは、同国サッカーの伝説的GKオリバー・カーンさんのことではない。日本のナオト・カン新首相誕生を告げるニュースだった。ドイツ在住のジャーナリスト永井潤子さんが月刊「未来」の昨年8月号に書いていた▼当時、ドイツの有力各紙は「夢見る人の後を継いだ現実主義者」「工業大学で学んだ科学者」「政治家一族ではない市民運動出身」と伝えた。薬害エイズで官僚の抵抗を押し切った功績を紹介し、緑の党のヨシカ・フィッシャー元外相になぞらえる報道もあったという▼鳩山前首相がわずか8カ月で辞任した後、菅首相に求められたものがあったとするならば、旧来とは違う市民感覚を生かした政治の実現ではなかったか。ドイツの空に響いた「カーン」は海外からの期待を込めた鐘の音でもあったろうに▼きょう退陣3条件がそろい、菅氏が首相としての仕事を事実上終える。どこかの国で「カーン」と唱えられているとすれば、それは政権の終わりを告げる弔鐘だろう▼そこには、大災害に際し、歴史に耐えうる政治を行えなかった嘲笑(ちょうしょう)も含まれているかもしれない。鐘声は菅氏一人ではなく、与野党の政治家にも向けられていよう。民主党代表選は弔鐘の鳴る中、あす告示される。


当然のように、毎日読んでいる琉球新報、沖縄タイムスのブログでは、話題にもならない。北海道新聞の「社説」だけ最後に紹介しておく。もし、菅直人氏が民主党代表・総理大臣にならなければ、昨年の参議院選挙で民主党の大敗北はなく、このような政治の停滞もなかったと思うのだが…。東京新聞には、かつて自分に「趣味は菅直人」と語っていたが、最終的に袂を分かった小林正則・小平市長が「拡大成長を続けたひとり親方のような人」と評していたが当を得ているかもしれない。

>政治手法が独善的すぎた 菅首相辞任表明(北海道新聞社説 8月24日)
 菅直人首相が30日に内閣総辞職すると表明した。東日本大震災後のかじ取りに失敗した責任を取る形となった。震災、津波、原発事故が重なる未曽有の災害に、政治の力を結集できなかった。背景には首相の独り善がりな政治手法があった。退陣は当然であり、むしろ遅すぎたと言わざるを得ない。
 被災した人々はどんな思いで見ていただろう。与野党の権力闘争に憤りを抱いたのではあるまいか。こんな政治に終止符を打たねばならない。新首相の下で体制を立て直し、与野党が協力して非常時に当たる姿を見せてもらいたい。
●延命策で時間を浪費
 首相の独走を示す事実は数多い。 福島第1原発の事故発生後、周囲の反対を押し切って現場を視察した。事故対応の遅れにつながった可能性が指摘されている。
 野党の協力取り付けに失敗した。自民党の谷垣禎一総裁に「大連立」を持ちかけたが断られた。事前に政策の調整もなく、電話で要請するという「軽さ」が批判を受けた。
 官僚を信頼しなかった。自らの周りに次々と新たな組織を立ち上げたが、指揮命令系統の混乱を招いた。
 内閣不信任案が可決されそうになった6月上旬に退陣表明したにもかかわらず、退陣に条件をつけて3カ月近く居座った。野党は「延命策だ」と反発し、国会は空転を繰り返した。震災後の非常時にあってはならない時間の浪費となった。
 首相の政権運営のまずさは震災後に限らない。昨年6月の就任まもなくから目立っていた。7月の参院選で敗北し、衆院で与党、参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」となった。首相は野党に謙虚に協力を求めるべきだった。
 今年2月に小沢一郎元代表を党員資格停止処分としたのは、「政治とカネ」の問題に厳しい姿勢を示そうとしたのだろう。だが小沢氏に近い議員の反発を買い、党内に分裂状況をつくり出した。党を掌握する力が十分ではなかった。
 そもそも首相は強権的な政治手法を意図的に採用してきたと見られても仕方ない部分がある。著書や国会答弁などで「議会制民主主義というのは期限を切ったあるレベルの独裁を認めることだ」と主張している。衆院議員の任期である4年をめどとして、政権に政治を任せるという意味だ。しかし「独裁」という言葉に野党は警戒した。意見の違いがあれば丁寧に話し合いを積み上げて合意形成を図る。この民主主義の大原則を守る姿勢が首相には足りなかった。
●方針転換の説明なく
 1年3カ月にわたった菅政権の下で、政権交代の意義が問われる結果を招いたことは無視できない。消費税増税を含む「社会保障と税の一体改革」や、農業者らに反発が強い環太平洋連携協定(TPP)への参加などを唐突に打ち上げた。
 「国民の生活が第一」が政権交代の基本理念だったはずだ。子ども手当や高速道路無料化などの看板政策も、首相退陣が絡んだ与野党の駆け引きの中で見直しを余儀なくされた。
 政治主導も後退した。国家公務員の給与を削減する臨時特例法案は今国会での審議入りが見送られた。
 首相はこうした方針転換について、国民が納得できるよう真摯(しんし)な態度で説明すべきだった。
 昨年、鳩山由紀夫前首相から政権を引き継いだ時、菅首相に求められたのは、民主党の政策を実現に移して信頼を取り戻すことだった。その役目を果たさぬまま、退場することになる。
●本来の姿を取り戻せ
 次の首相の最初の仕事は、菅政権で停滞した政治を立て直すことだ。
 津波で家や仕事場を失った人々の生活を一刻も早く再建しなければならない。福島第1原発の事故で避難した人々が帰宅できる道筋をつけることも急務だ。
 原発依存から脱却し、重点を自然エネルギーに移す首相の方向性は理解できる。次の政権でさらに具体化してほしい。本格的な復興に向けて財源の見通しも示す必要がある。
 29日に行われる民主党代表選では中身のある政策論争が求められる。相変わらず「親小沢対反小沢」の路線論争になれば、国民は民主党政権にノーを突きつけるだろう。
 野党の協力も欠かせない。首相の退陣表明後の国会空転で震災関連の法案審議が大幅に遅れた。野党の行動は党利党略を優先したものだったと言わざるを得ない。自民党の谷垣総裁は菅氏が辞任すれば民主党政権に協力する考えを示した。次期政権が発足すればその約束を果たすときだ。公明党など他の野党も震災対応については建設的協力を惜しむべきではない。
 大震災からどう立ち上がるか、日本の底力が試されている。先頭に立って国民を引っ張るという政治の本来の姿を早く取り戻してほしい。

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