VW社で、退勤した職員にEメール発送禁止を労使合意

プライベートの話で恐縮だが、ついに携帯電話を持つことなしに、とりあえず「現役」を終わった。変わり者とレッテルが貼られ、多くの皆さんから、連絡が取りにくいと批判を受けつつ…。なぜ持たないのかと問われると、携帯を持たない者、あるいは持っていても、家族以外の他者に電話番号を教えない方は何と答えているのだろう。「追っかけまわされたくないから」という答えが、最も多いかもしれない。仕事に必要であり、勤務時間内に連絡を取りあう必要性がある仕事や立場では致し方ないが、勤務時間外にも仕事の連絡が多数入る可能性がある場合、あえて携帯を拒否することが理解いただけるだろうか。自分の場合には、事務所か都労委にいるこどがほとんどであり、確実に固定電話で連絡がついたことも理由があった。わが事務所は、携帯電話の所持を進めるために、基本料金部分を経費として、パート職員を除くスタッフに補助していた。その代わり、補助を受けている者・全員の携帯電話番号が公開された。したがって、基本的には24時間通話が可能とされた。さて、このような労務管理は本当に適正だろうか。

事務所に電話がかかり、その者が不在の場合、所有する携帯電話の番号を聞かれることがある。当然ながら基本的には個人情報であり、本人の同意なしに番号を教えることは許されない。しかし、職場内で携帯電話番号が公開され、勤務時間外でも携帯電話への連絡を可能とされた場合には…。業務であれば、「拘束」でない電話連絡程度であれば許されるのだろうか。しかし、それは勤務時間外まで、労働を強制しているといえないだろうか。そんな不安を解消できる報道が、昨年末、ハンギョレ新聞のHPに掲載された。素晴らしい「労使合意」だと評価したい。では、紹介。

> "退勤した職員にEメール発送 禁止" ドイツ フォルクスワーゲン 労使合意(ハンギョレ新聞 2011年12月26日)
 ‘スマート オフィス’が普遍化しながら、時をわきまえずに鳴るスマートフォンの会社からのEメール連絡にストレスを受け取っている人にはうれしい便りが出てきた。
 ドイツの自動車グループ フォルクスワーゲンが24日、労使合意で退勤後の一時間半と出勤前の一時間半の間には会社からEメールを送らないことで合意したと通信が伝えた。フォルクスワーゲンの職員はブラックベリーフォンでEメールをやりとりするが、この間 勤務時間外に到着するEメールにもいちいち対応しなければならない場合が多く、職員が年中無休で仕事をしている格好という不満を提起してきた。 フォルクスワーゲン スポークスマンは「企業として私たちは最新のコミュニケーション手段を活用する一方、仕事と生活の均衡も追求しなければならなかった」として「今回の措置がその均衡を見出すと思う」と明らかにした。
 先月にはPersilなど洗剤で有名な化学専門企業ヘンケルがクリスマスと新年連休の間の‘Eメール赦免’を発表した。 ヘンケルの会長であるカスポロオシュテットは<フランクフルト アルゲマイネ ツァイトン>に 「この措置のメッセージは明確だ。 非常状況にのみEメールを送れということ。このような原則はすべての職員にみな該当する」と話した。


VW社の「労使合意」は、様々なものがあり、全世界の範とされてきた。「労使合意」といっても、日本的な企業内のものだけではなく、IGメタルとVW社や、EU全体に影響を及ぼすものが多く、今回のケースはどのレベルか残念ながらわからない。いずれ濱口桂一郎さんが紹介してくれるだろう、と期待する。なおVW社の労使協定といえば「ワークシェアリング」に関するものが、最も有名かもしれない。厚生労働省が2001年4月にまとめた「ワークシェアリングに関する調査研究報告書」によれば、ワークシェアリングは、その目的から 「雇用維持型(緊急避難型)」、「雇用維持型(中高年対策型)」、「雇用創出型」、「多様就業対応型」の四つのタイプに分類できるとされるが、VWは「雇用維持型(緊急避難型)」の典型例の「雇用保障協定」として、「1994年1月から労働時間を週28・8時間(週4日勤務)に短縮。その代わり95年いっぱいは経営上の理由による解雇をしない。賃金は年収ベースで十数㌫の減収となった」ことが紹介されている。また、昨年の賃上げで、「IGメタル、フォルクスワーゲン社と3.2%の賃上げで合意」と紹介された際に以下のような報道がされて驚かされた。

>IGメタルの今後の取り組み
 IGメタルでは、今後も引き続き業績やインフレを考慮しながら他産業で賃上げなどの交渉をすすめる予定だが、同時に昨年秋から取り組みを強化している非正規の労働条件向上にも力を入れるとしている。
 2月24日には、ドイツ労働総同盟(DGB)や統一サービス産業労組(Ver.di)と合同で、非正規労働者の労働条件向上や均等待遇促進に関する全国キャンペーンを実施したが、これに呼応してVWやダイムラーでは同日、計数千人の非正規労働者を常用雇用とすることを発表し、労働組合側にとって幸先の良いスタートとなった。(JILPT「最近の海外労働事情」2011年3月)
 

最後に、10年以上も前の文書で恐縮だが、IMF-JCが報じた素晴らしい「労使合意」を紹介して終える。企業別労働組合を基本とする日本の労働組合は、EUや世界の労使関係と大きく異なると、自分も労働講座で説明するが、問題は、労働組合及び企業のスピリチュアルな(?)問題でもあるということを認識し合いたい。

>フォルクスワーゲン労使が、中核的労働基準に関する共同声明作成で基本合意(2001年10月30日 全日本金属産業労働組合協議会<IMF-JC/金属労協>)
 フォルクスワーゲン社、フォルクスワーゲングループ世界経営協議会(世界中のフォルクスワーゲングループ各社の使用者と従業員代表で構成)とIMF(国際金属労連)は、IMFならびにIGメタル(ドイツ金属労組)の方針に基づき、ILOの中核的労働基準を、世界中のフォルクスワーゲン各社ならびに取引先において遵守することを労使で宣言し、実践する「企業行動規範」を締結するための協議を行ってきましたが、さる9月12日、基本合意に達しましたので、お知らせいたします。
 中核的労働基準に関する共同声明については、本年年末までに具体的に文案を精査し、2002年前半にフォルクスワーゲングループ世界経営協議会において、フォルクスワーゲン社、フォルクスワーゲングループ世界経営協議会、IMFの三者が連署して締結する予定です。
<解  説>
中核的労働基準に関する企業行動規範とはILO(国際労働機関)が1998年、ILOの基本8条約(29、87、98、100、105、111、138、182号)に盛り込まれた中核的労働基準、すなわち ○団結権、団交権の保証/○強制労働の禁止/○児童労働の禁止/○差別の撤廃、については、当該条約の批准の如何にかかわらず、ILO加盟国すべてで尊重し、促進し、実現されなければならないという、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言(いわゆる新宣言)」を政労使三者で合意しました
 中核的労働基準に関する企業行動規範とは、この「新宣言」を実際に具体化する労使の取り組みの一貫として、企業が、世界中の事業拠点ならびに取引先などにおいて中核的労働基準を遵守し、また、これを実践するためのシステム整備を図ることを宣言する、基本方針です。
●中核的労働基準に関する企業行動規範の、世界における締結状況
 中核的労働基準に関する企業行動規範は、これまで衣料品、製靴、玩具、食品、石油、流通などの各産業を中心に作成されてきました。代表的な企業としては、リーバイ・ストラウス、GAP、ナイキ、リーボック、マテル、トイザらス、ウォルト・ディズニー、エクソン、シェル、LLビーン、シアーズ、ウォルマートなどがあげられます。
●金属産業における状況
 金属産業関係では、他産業に比べて、世界的にやや取り組みが遅れましたが、1997年のIMF世界大会以降、取り組みを本格化させています。今回のフォルクスワーゲンの合意は、その先陣を切るものです。なおGEについては、従来より労働組合が企業行動規範締結を図るべく、労使協議ならびに株主総会の両面で経営側に対して圧力を強めています。また、GM、フォード、ダイムラー・クライスラーのいわゆるビッグスリーでは、労使合意によるものではありませんが、中核的労働基準遵守を謳った「グローバル・サリバン原則」を経営側として、宣言しています。
●日本での状況
 日本では、ゼンセン同盟傘下の上新電機、ベスト電器が、すでに労使で企業行動規範を締結しています。IMF-JCは、2000年7月に「海外事業展開に際しての労働・雇用に関する企業行動規範(IMF-JC版モデル)」を策定、2001年11月の第30回IMF世界大会を当面の目標として、電機連合、自動車総連の主要組合を中心に、労使協議を重ねています。しかしながら、企業行動規範の必要性が経営側にとって、今ひとつ実感として認識されていない、そして経営側の一部に、企業行動規範は労使共同で締結すべき性格のものではないという考え方がある、などの状況があることは事実です。
 日経連は、「企業行動全般にわたる行動規範」は経営者が責任をもって作成すべきものであるが、「社会・労働分野に関する企業行動規範」をどのようなかたちで策定するかは個別企業で判断すべき問題、との立場であり、反対はしておりませんが、積極的ともいえません。
 中核的労働基準に関する企業行動規範は、多国籍企業が、発展途上国の事業拠点において児童労働や強制労働を使用し、それがマスコミ、NPOなどから指摘されて、大規模なボイコット運動に発展したという経験が、そもそもの発端であります。
 日本企業についても、経済のグローバル化のなかで海外での労働問題に係る紛争が拡大傾向となっています。そういった火種を迅速にキャッチしてすばやく対処するために、また現実に海外事業拠点において紛争が生じた場合に、IMFという労働組合のネットワークを通じて迅速に解決を図るためにも、われわれは中核的労働基準に関する企業行動規範を労使が共同で策定し、締結すべきであると考えます。

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