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zoom RSS 朝日新聞社説の「労契法改正で非正規改善」に?

<<   作成日時 : 2012/09/25 07:21   >>

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朝日新聞が、昨日の社説で「労働」について書いた。最近では珍しいことゆえに取り上げてみたい。濱口さんは高く評価されていたがが、自分としては(失礼!)、少し不安に思っている。有期契約労働者の労働条件について、先日改正され、来年4月1日より施行される「労働契約法」に関しては、この間、何度ともなく取り上げているので、自分の苛立ちについては理解されていると思うが、朝日の論調は、昨日の「労働経済白書」に関する自分のブログを含めてどう考えるか、ということになる。ただ理解されにくい方のために、まず基本の説明から必要なのだろう。とにかく、ちょっと危ないのだ。まず新しい労働契約法20条を掲げることから始める。

労働契約法第20条 (改正条文)<期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止>
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度 (以下この条において 「職務の内容」 という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。


この法改正を受けて、朝日新聞は、「社説」で以下の通り主張した。ぜひとも、「なんだこれは!」と思って欲しい。しかし、これが「現実」なのだ

労働契約法―非正規の改善へ活用を(2012.9.23)
 パート労働などの非正規雇用は、いまや働く人の35%にのぼる。正社員との格差を縮小し、賃金や待遇を底上げするため、新しい労働契約法を有効に活用すべきだ。
 大手スーパーのイトーヨーカ堂が今後3年で、正社員約8600人を半減させ、パートを約6800人増やす方針を打ち出した。安売り競争で低迷する業績を立て直すためという。 社員に占めるパートの割合は8割弱から9割に高まる。パートは時給制で、半年契約を更新しながら働く。
 それだけ見ると、低い賃金で不安定な雇用が、またじわりと広がった印象を与える。 ただ、先の国会で成立した改正労働契約法は、この風景を変える可能性がある。
 有期から無期への雇用転換を促すこの法律は、かえって「雇い止め」を誘発する懸念も指摘されている。だが、注目すべき点もある。「有期であることを理由に、無期雇用の社員との間で不合理な格差があってはならない」と決めたことだ。
 正社員との待遇の差について「仕事内容が、このぐらい違うから」と説明する責任を会社側が負うと解すべきだろう。単に「パートだから我慢して当然」との姿勢は通用しなくなる。
 ヨーカ堂の場合、パートを増やすのは、高齢化する顧客にきめ細かい接客サービスをするのが狙いという。安値だけでない価値を実現し、収益力を上げる責任を、これまで以上にパートに担ってもらうわけだ。
 であれば、それに見合った処遇や、意欲と能力を引き出す昇進などの仕組みが必要になる。
 法律の施行は来春になる見通しだ。それまでに各企業の労使は、不合理な格差の有無をチェックし、是正に向けた話し合いが求められる。
 この動きは、正社員の働き方にも影響する。パートなど非正社員との間で、身分の違いではなく、仕事の違いで処遇を決める流れを後押しするからだ。
 ただ、単に正社員の待遇を引き下げ、雇用保障を弱めるだけでは、社会が不安定化する。正社員の年功序列型賃金は、年齢とともに増える生活費をまかなうためのものだった。その代わり政府は、子育てや住宅などの分野で、公的サービスを拡充せずにすんだ。欧州の福祉国家との違いである。
 仕事に応じた賃金になれば、家族を含めた生活に十分な額となるとは限らない。基礎的なサービスは社会で面倒をみる仕組みを、同時並行でつくりあげていくことが不可欠だ。


「労働契約法」は労基法のような強行法規ではなく、基本的にはこの法律に違反しても罰せられることはない、とされている。したがって、民事的効力のある「素晴らしい条文」ではあるが、これをもって法違反として使用者と対決する場合には、十分な態勢(?)が必要とされる。「連合」のHPに、第12回中央執行委員会(2012.9.21)への報告事項として「連合・なんでも労働相談ダイヤル 2012年8月 相談事例編」が掲載されていて、大なる「不安」を実は感じた。相談者の質問は「私の職場では、契約社員の交通費は1カ月の上限が10,000円です。私はバスと電車で通っていますが、月2万円近くかかります。仕事内容、勤務時間など正社員とほとんど変わらないのに、正社員は交通費の実費が全額支払われます。こうした扱いは、どうしようもないのでしょうか」というものだが、この時期にあまりにもできすぎの質問で、若干の違和感を覚えたが、「連合」の回答は以下の内容であった。

>今年8月10日に有期労働契約の新しいルールとなる労働契約法の一部を改正する法律が公布されました。改正された労働契約法の第20条には、「有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないものとする」とあります。
 対象となる労働条件とは、賃金や労働時間等の狭義の労働条件だけでなく、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など、労働者に対する一切の待遇が含まれます。
 労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、@職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)、A当該職務の内容および配置の変更の範囲、Bその他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されます。そして、とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、上記@〜Bを考慮して、特段の理由がない限り、合理的とは認められないと解されるとの行政通達が出されています(基発0810第2号)。
 改正労働契約法の施行日はまだ未定ですが、公布の日から1年以内とされています(「雇止め法理」の法定化である第19条は公布日に施行)。
 使用者には改正労働契約法第20条を根拠に、正社員と契約社員との通勤手当の相違について、改善を求めてはいかがでしょうか? また、職場に労働組合がなければ、同じ職場の仲間と労働組合を結成することにより、職場の問題解決のために労使で話し合うこともできます。もちろん、一人でも入れる地域ユニオンもあります。連合も引き続き相談に応じますので、問題解決に向けて一緒に頑張りましょう。


前段はよく説明をされている。ただ、まさか実際にアドバイスをしてはいないとは思うが、この「回答」を受けて、相談者がある日突然、交通費の全額支払いを個人で要求したとしたら…。労働組合に加入しての要求・交渉ならともかく、別な理由をもって雇い止めされる可能性は高い。もっとも、それよりも驚いたことに、これが現実にあった相談であったならば、このような相談内容を、直接HP上に掲載したように思えることには配慮をしてほしかった。ここに記載はしていないが、HP上には、この相談者のプロフィールとして、性別、年齢、雇用形態、業種、仕事内容、勤務地域が記載されていて、これだけで相談者が「特定」される可能性は大きいと思えてしまう。相談者の秘密は厳守するのが基本であり、このように相談者が特定される可能性のあると思えてしまう(当然ながら、実際は決してそんな対応はされていないが)書き方は避けるべきだと思うのだが…。

とにかく、一連の労働法改正を受けて、解説書は軒並み改定されつつある。それぞれの労働法学者がどのように解説されるか注目していきたい。なお、一応念のため、「平成24年8月10日付け基発0810第2号 労働契約法の施行について」(厚生労働省労働基準局長発 都道府県労働局長あて)の20条部分を紹介しておく。

6 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(法第20条関係)
(1) 趣旨
有期契約労働者については、期間の定めのない労働契約を締結している労働者(以下「無期契約労働者」という。と比較して、雇止めの不安があることによって合理的な労働条件の決定が行われにくいことや、処遇に対する不満が多く指摘されていることを踏まえ、有期労働契約の労働条件を設定する際のルールを法律上明確化する必要がある。このため、有期契約労働者の労働条件と無期契約労働者の労働条件が相違する場合において、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止するものとしたものであること。
(2) 内容
ア 法第20条は、有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容(労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう。以下同じ。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、有期契約労働者にとって不合理と認められるものであってはならないことを明らかにしたものであること。
 したがって、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件の相違があれば直ちに不合理とされるものではなく、法第20条に列挙されている要素を考慮して「期間の定めがあること」を理由とした不合理な労働条件の相違と認められる場合を禁止するものであること。
イ 法第20条の「労働条件」には、賃金や労働時間等の狭義の労働条件
のみならず、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生等労働者に対する一切の待遇を包含するものであること。
ウ 法第20条の「同一の使用者」は、労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断されるものであること。
エ 法第20条の「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」は、労働者が従事している業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度を、「当該職務の内容及び配置の変更の範囲」は、今後の見込みも含め、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化等(配置の変更を伴わない職務の内容の変更を含む。)の有無や範囲を指すものであること。「その他の事情」は、合理的な労使の慣行などの諸事情が想定されるものであること。
 例えば、定年後に有期労働契約で継続雇用された労働者の労働条件が定年前の他の無期契約労働者の労働条件と相違することについては、定年の前後で職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲等が変更されることが一般的であることを考慮すれば、特段の事情がない限り不合理と認められないと解されるものであること。
オ 法第20条の不合理性の判断は、有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されるものであること。とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるものであること。
カ 法第20条は、民事的効力のある規定であること。法第20条により不合理とされた労働条件の定めは無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められ得ると解されるものであること。また、法第20条により、無効とされた労働条件については、基本的には、無期契約労働者と同じ労働条件が認められると解されるものであること。
キ 法第20条に基づき民事訴訟が提起された場合の裁判上の主張立証については、有期契約労働者が労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎づける事実を主張立証し、他方で使用者が当該労働条件が期間の定めを理由とする合理的なものであることを基礎づける事実の主張立証を行うという形でなされ、同条の司法上の判断は、有期契約労働者及び使用者双方が主張立証を尽くした結果が総体としてなされるものであり、立証の負担が有期契約労働者側に一方的に負わされることにはならないと解されるものであること。


以前も紹介したが、労働弁護団幹事長である水口洋介弁護士のブログ「夜明け前の独り言」には、こう記載されていた。

>改正法20条は、有期を理由にした不合理な労働条件の格差は違法無効となることを明記しました。例えば、最近報道された福島原発労働者の場合ですが、下請企業の正社員であれば、1日2万4000円の危険手当が支払われているのに、その下請に雇用された有期契約労働者は、日当1万1000円のみで危険手当が払われません。このような場合には、不合理な格差として、未払いは違法となります。いろいろ活用できる規定です。

そうあってほしいし、そのために私たちは努力しなければならない。しかし、経営や経営法曹、社労士、裁判所への対応はそう「簡単」ではない。直接、20条に関係するものではないが、ある社労士さんのブログに記載されていた「解雇された従業員からの未払残業代等請求に関する判例」を紹介して、今日は終える。この事件では、労働者がきちんと立証できなかったのか、雇用契約が不十分であることもあって、タイムカードがあっても、そのタイムカードの記載から労働時間は認定されない、とされてしまった。裁判所はどんどん厳しくなっていることを肝に銘じて欲しい。そして朝日新聞の提起ではないが、労働組合は、経営側以上の努力をきちんとしなければならない。アドバンスニュースが報じた「(連合本部は、各労働関係改正法の着実な運用に向けた取り組みが重要として)9月中に学習会を2回開催する。第1回目の参加対象は構成組織・地方連合会、単位組合ほか300人程度で9月25日に連合会館で開催。第2回目は70人程度で9月28日に開く」ことで済む問題ではない(もちろん担当者の頑張り・努力には敬意を表するが…)。なお、この問題のために日弁連が下記シンポジウムを開催することも紹介しておく。もちろん自分も参加する予定だ。
http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2012/121024.html

スリー・エイト警備事件(大阪地裁平成24年1月27日・労判1050号92頁)
【事案の概要】
 Y社は、警備業務等を主たる業務とする会社である。Xは、平成19年4月から平成21年2月まで、Y社の営業部門で勤務した。XとY社との間では、雇用契約書は作成されず、労働条件通知書等の書面も作成されなかった。Y社では、出退勤時刻をタイムカードで管理していた。本件は、Y社に解雇されたと主張するXが、残業代および解雇予告手当が未払いであるとして、Y社に対し、それらの支払いおよび付加金の支払いを求めた事案である。
 Y社は、Xとの間の雇用契約は名目上のものであり、時間外労働の事実も解雇の事実もないなどと主張し争った。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 XとY社との間で、所定労働時間や休憩時間の合意がなくとも、Xは通常、朝礼に間に合うように出社し、9時頃から外回りに出ており、かつ外回りから帰社する時刻は、帰社後に管制業務に従事する場合は午後3時頃、それ以外の場合は午後5時ないし5時30分であり、また適宜休憩を取っていたことから、XはY社の指揮命令の下、営業等の業務に従事し、その対価として賃金の支払いを受けていたと認められ、XとY社との間には雇用契約が成立していたことは明らかである。
2 Xが、Y社の従業員として営業等の業務に従事していたことは認められるものの、その労働時間を客観的に裏付ける証拠は存在しない(Xの週間予定表は提出されているが、これにも時刻の記載はなく、実際にどの程度の営業活動がなされていたのかは判然としない。)。かえって、XとY社との間では、所定労働時間に関する合意も、休憩時間に関する合意もなく、Xは外回りに出た際には、適宜休憩を取っていたというのであるから、Xが法定労働時間を超えて労務を提供したか否かは、結局のところ不明であるといわざるを得ない。
 この点、Aは、同人が午後7時以降まで残業をした際は、Xは必ず在社していたと証言するが、仮にXがY社の事務所に在社していたとしても、そのことから直ちに、実際に労務を提供していたと認められるものではない。Y社は、XがY社の事務所にいる際、仕事をせずに携帯ゲームで遊ぶなどしていたと主張し、Bは、Xが携帯ゲームをしているのを何度か見た旨、これに沿う証言をしている。Bは、Y社申請に係る証人ではあるが、すでにY社を退職しており、また、Xに有利な証言もしていることに照らすと、その証言には一定の信用性が認められるから、Xが、Y社の事務所に在社していた際、実際にどの程度労務を提供していたのかは、必ずしも明らかでないといわざるを得ない。
3 ・・・仮にXのタイムカードが残存していたとしても、タイムカードは、あくまでXの出退勤時刻を示すものにすぎないところ、本件では、前記のとおり、Xの営業のために外出し、適宜休憩を取っていたこと、事務所に在社している時間のうち、実際に労務を提供した時間がどの程度であったのかが不明であることからすると、タイムカードの記載から直ちにXの労働時間を認定することはできない。
 以上によれば、XのY社に対する未払残業代請求については、Xによる時間外労働の事実が立証されていないといわざるを得ないから、認めることができない。


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