「マスコミは仏のストに箝口令を敷いている」そうだ…

労働組合という「業界」に詳しいのは事実だが、この間の化学総連離脱問題を含めた連合の「混乱」に関してこのブログで書く気はない。とりわけ『選択』2016年6月号に関しては、コメントする気もおきない。連合各構成組織は参議院選挙組織内候補に「全力を集中」しており、それがすべての「根源」にある。あと1ヵ月-アベ政治との決着こそが焦点であり、それ以外には興味はない。もちろん、労働者の未来にとって何がプラスであり、そのためにそれぞれの政党や候補者に何を託せるのか、冷徹に見据えることが問われている。

この国の為政者は「運動」を見えさせないようにしていることに強い危機を感じる。それは日本だけではなく、世界の「運動」に対しても同様であり、野川忍さんも、その6/1付けのツイッターで「フランス全土に労働者のストライキが拡大し、交通機関の麻痺、大規模な生産活動の停止、労働者と機動隊の激しい衝突が繰り広げられている。日本のマスコミはこれを報道しないよう箝口令が敷かれているようだ」と綴った。
https://mobile.twitter.com/theophil21/status/738227294569824257?p=v

野川さんの添付した記事や『労働情報』誌の記事も重要だが、今日の学習は、レイバーネットの飛幡祐規さんによる 「『人民戦線』マティニヨン協定80周年に~労働法反対運動のその後」にしたい。かなり難解でありぜひとも「労働情報」の記事などを参考にしてほしいが、とにかくここには「運動」がある。
http://www.labornetjp.org/news/2016/0608pari

>2月後半からフランスでは、労働法典改正法案(エル・コムリ法)に反対する大規模な社会運動がつづいている。運動はソーシャルメディアで始まり、3月9日から大規模なデモが何度も繰り返され(5月26日で8度目)、5月半ばからは製油所、港湾労働者、国鉄などでストも始まった。
 一方、国民議会には5000以上の修正案が出されたが、十分な討議を経ずに5月12日、法案は強行に採択された。2015年7月の規制緩和「マクロン法」のときと同様、与党社会党議員の中に反対者が多かったため、採決なしに法案を通すことができる憲法49条3項が使われたのである。内閣不信任案が提出されたが過半数を得られず、エル・コモリ労働法は採択された。
 もっとも最終採択までにはまだほど遠く、6月の元老院での討議を経て、7月は国民議会と元老院で二度目の討議がなされる。そして、保守が過半数の元老院では内容が変更され(ネオリベラル度がさらに増すだろう)、国民議会での二度目の討議でも、再び憲法49条3項が使われることが予測されている。過半数の支持を得られない法案を無理やり通そうとするヴァルス政府とオランド大統領の強硬な態度は、国籍剥奪を書き加えた憲法改正法案のときに似ている。憲法改正案は撤回されたが、今回はどうなるだろうか。
 ところで、投票なしで法の採択を可能にする条項が憲法にあることは、フランス第五共和政憲法の特殊な性格を表している。立法府より政府が優位に立つこの条項が第五共和政憲法に加えられたのは、第三共和政(1870~1940)・第四共和政(1946~1958)の立法優位のもとで、議会での討議が長引き、政権が不安定だったからだという。フランスでは1879~1940年に99、第四共和政下で24の政府が交替したほど、複数の政党が織りなす力関係によって、政権が頻繁に覆されてきた。議会は歴史的に、英米のような二大政党編成ではなかったのである。しかし、投票せずに法案を採択できる憲法49条3項は反民主主義的だ、と近年はますます批判されるようになった。オランド大統領自身、2006年に「49条3項は民主主義の否定だ」と発言している。ヴァルス内閣は今回を含めてすでに4度もこの条項を使っているが、それは政府が与党内で少数派であることを表している、と憲法学者のドミニック・ルソーは指摘する。実際、マクロン法もエル・コモリ法もオランド大統領の選挙公約にはまったくなかった内容であり、ネオリベラル政策への転換を拒否する議員が左派陣営にいるのは当然である。
 大統領とヴァルス政府が少数派であることは、法案への反対が7割という3月末の世論調査にも示されている。したがって、49条3項による強行採択は法案反対者をますます怒らせ、以後のデモやストでは49条3項を批判するプラカードや垂れ幕が多数登場して、ストが広がった。製油所のストはとりわけフランス西部でガソリン不足をひき起こし、政府は直ちに「在庫がじゅうぶんあるから問題ない」と発表。5月25日には全国19か所、すべての原発でストが採決された。電力供給はヨーロッパ規模で調整されているため、フランスの原発の一部が止まったり発電量を減らしたりしても、停電が起きるわけではない。しかし、配電網をストップさせることはできるし(ナント、マルセイユなどで一時停電)、他国から電力を買うのでフランス電力には痛手だ。ストは国鉄、空港の管制塔職員、ゴミ焼却所などにも波及した。
 ヴァルス首相はストに対し、消費者と経済に悪影響をもたらすとして、とりわけCGT(労働総同盟)を反民主主義的だと厳しく批判し、法案は絶対に撤回しないと強調した。メディアでもガソリン不足に苦しむ市民の声などが大きく報道され、経営者団体Medefの長はCGTを「ごろつき、テロリスト」とまで表現した。近年、フランスでもネオリベラル思想が優勢となり、労働組合を敵視し、CGTなど労働争議を行う組合を「旧態依然で時代遅れの保守主義」と揶揄する傾向が強まっている。労働者や組合員に対して刑事裁判を起こすケースも増えた。例えば2015年10月、2900人の人員削減を発表したエールフランスの経営陣に対して、怒った従業員たちが中央委員会に詰めかけ、人事部長のワイシャツが破られた事件がある。経営者側はビデオをもとに、15人の従業員を訴え5人を解雇した(うちひとり、CGT組合代表は後に、労働条件視察官が証拠が十分でないとして解雇を取り消した。被告全員、告発理由の「襲撃」や暴力を事実と異なると主張している)。
 実は、フランスはOECD内でも労働組合加入率が低く(7,7%)、それを理由にCGTは少数派だと叩かれているが、企業委員会選挙(組合員であるなしにかかわらず、従業員全員が投票)で1位の得票率を得ている(2013年には2位のCFDTとほとんど差がなくなったが)。また、ストの権利は第四共和政憲法の前文に記され、第五共和政憲法でも保障されている(軍人など一部を除くと公務員にもストの権利がある)。そうした「伝統」も近年は崩れてきたようだが、ガソリン不足や交通機関のストによる不便にも関わらず、ストに寛容な人はまだ多いようだ。わたしも先日、地方移動の際に国鉄のストに遭遇したが、駅員も乗客もとてもクールに対応していた。5月23~25日に行われた世論調査によると、62%の人がこの社会運動は正当だと答えている(「正当でない」は38%)。別の世論調査では、多数が経済やサッカーのヨーロッパ選手権への悪影響を懸念しているが、その責任は労働組合より政府にあると6割が答えている。
 CGTの敵視と共に、今回の社会運動に対するヴァルス政府の対応で驚くのは、デモにおける治安部隊(機動隊、憲兵隊、警察の部隊)の大規模な動員と、これまでに増して威圧的・暴力的な態度である。デモ隊の中にはたしかに、「みんな警察が大嫌い」というプラカードを掲げる若者たちもいて、3月以降のデモではほとんど必ず、少数の若者たちと国の治安部隊のあいだで衝突が起きる。その際、デモ隊から離れる道がしばしば機動隊によって塞がれているため、衝突が起きた場所の近くにいる参加者やジャーナリストは一様に催涙ガスを浴びる。さらに、治安部隊が非暴力の参加者やジャーナリストに対して不当な暴力を働く場面(高校生や女性が殴られるなど)が何件もソーシャルメディアで流れて、問題になった。治安部隊はフラッシュボールという武器(死に至らない銃弾と言われるが、状況により死者や重症あり)や手榴弾の一種(sting grenade)まで使用する。パリにかぎらず地方でのデモでも同様に治安部隊による暴力のケースが指摘され、負傷者が多数出ている。レンヌでは学生が片方の目を失明し、5月26日にはパリのジャーナリストが手榴弾の部品(?)を頭に受けて、いまだ昏睡状態にある。ジャーナリスト組合はジャーナリストへの暴力に抗議して、6月初めに国の人権擁護機関に提訴した。
 ところで、この季節には稀な大量の降雨量によって、5月末からフランス各地は水害に見舞われた。そのせいもあってか、6月初めに行われた世論調査では労働法案反対のストとデモの続行を支持する人は45%、支持しないが54%となった(同じ調査会社による3週間前の結果では逆に、支持が54%、不支持が45%だった)。6月10日からはサッカーのヨーロッパ選手権が始まるため、メディアや大衆がそれ一色になり、反対運動が止むことを政府は期待している。前回のコラムで紹介した「Nuit Debout 夜、立ち上がれ!」もまだ続いているが、広場に集まる人数は減っている(「美しい5月」でなかったひどい天候にもかかわらず、2か月以上続いたこと自体めざましいが)。しかし、この社会運動の広がりに貢献した独立紙「ファキール」の編集長(LVMHについての映画「メルシー・パトロン」の監督)、フランソワ・リュファンはリベラシオン紙へのインタヴューで、「夜、立ち上がれ」の存在がデモからストへの流れをつくり、若者援助やTIPP(TAFTA、TPPの北大西洋版)への反対など、社会党政府の政策を少しマシに変えたことは、大きな意味があると語る。そして、ネオリベラル政策に転換した社会党抜きで、左派の大衆運動をつくる必要性を強調している。
 80年前の1936 年6月7日の深夜、人民戦線政府のもと、CGTと当時の雇用者総連合は「マティニヨン協定」を結んだ。週40時間労働、有給休暇、労働協約の実施などを定めた、フランス労働者運動の勝利(大規模なゼネストが行われた)を象徴する出来事である。現社会党政府はその記念切手(初の女性閣僚誕生を表す)発売に際し、パリ郊外モントルイユ市の郵便局での行事に、エマニュエル・マクロン経済相を派遣した。これまでも35時間(労働時間短縮)法や高額所得者への特別税に反対する発言や、労働者や低所得者に対する侮蔑的な発言が問題にされてきたマクロンは、郵便局前に集まった労働法反対者たちからブーイングされ、卵を投げられた(1発が髪の毛に命中)。それについて彼は「許されない暴力行為」と形容したが、治安部隊が使うフラッシュボールや手榴弾、そしてネオリベラル経済が日々生み出している社会的暴力に比べて、卵の方が節度があるのではないだろうか。
 エル・コモリ法の行方はわからないが、人民戦線発足80周年に労働法典壊しを進める社会党政権に対して、左派市民の反感が募ったことはたしかだ。オランド大統領への一般市民の不満はそれまでも高かったが、4月の世論調査では85%にも達した。次の大統領選は保守が勝つだろうと予測されており、野党LR(旧UMP)の候補者はみな極端なネオリベラル経済政策を掲げている。労働者の権利を切り崩す道を開いた政権として、オランドの社会党はフランスの歴史に名を残すことになるのだろうか。


肋間神経痛が治まらない。朝、痛み止めを1錠飲んで、文章を綴れるようになるまで時間がかかるし、それでも正常ではない。医者は様子を見るしかないと言うだけで、まぁ、気楽に付き合っていくしかなさそうだ。

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