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zoom RSS 労組はこんな悲惨な未来図に対応できるか

<<   作成日時 : 2018/04/08 06:20   >>

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「働かせ方改革法案」が閣議決定されたが、「解散恫喝」もあり政局がらみで読売報道「働き方法案 成立綱渡り」によれば<審議入りできるのは早くて4月下旬。成立までには衆参両院あわせて最低2カ月以上の審議が必須だが、審議が順調に進んでも成立は会期末直前の6月中旬に>という。連合事務局長談話にも相変わらず脱力したが、裁量労働制を潰した立役者の一人・上西充子さんは昨日のTwitterで<的確にピンポイントで噛んでいけば、それだけで、システムの流れは変わる。水の流れる方向が変わるように。そういうイメージで、「ここぞ」というところに噛んでいく。そのイメージを得たことは大きかった。「ここぞ」というところに障害物(「パチンコ玉」)を置いて、新しい水の流れを作る。新しい水の流れが生まれるまでは、水路をしっかり掘る。あとは水の勢いが、新しい流れを生み出す。今回の裁量労働制データ問題でいえば、野党の質疑や合同ヒアリング、メディア報道、世論調査などが、水の勢い。>と力強く発進してくれた。

その上西さんのTwitterで紹介されていた共同通信調査< 高プロ」賛成、企業の28% 裁量労働拡大支持は35% | 2018/4/7>。上西さんは<「いずれについても約6〜7割の企業が「どちらとも言えない」と賛否を保留した」
風向きが変わってきたか?>としたが、労組以上に企業も、日本社会も厳しい状況にある。とにかく誰に会っても明るい話題が出てこない。高齢者世代の介護、現役世代の教育等々に自分の病気の話が入るから…天下国家を論じる(冗談!)こともできない(苦笑)。これも本田由紀さんのTwitterで知ったが昨年度<私立大学新入生の家計負>で<「入学の年にかかる費用」は297万円(自宅外通学者) 〜年収の3分の1を占め家計の大きな負担に/毎月の仕送り額は8万6100円で過去2番目に低い水準 家賃を除いた1日あたりの生活費はわずか817円>だという。

その本田さんのTwitterでは朝日・ベネッセの調査<格差容認、都市部ほど強く 高学歴・経済的にゆとり>の記事で<「調査では今後の日本社会で「貧富の差が拡大する」かどうかも聞いた。「とてもそう思う」「まあそう思う」の合計は85・0%で、多くの保護者は格差が拡大すると見ていた。」所得による教育格差の容認が広がりつつ貧富の差の拡大を予想。”現実的”なのか残酷なのか>とあった。さらには熊谷徹さんが<これは、とても怖い記事だ。日本の政治家たちに是非読んでもらいたい>としたダイヤモンドの記事も。暗澹たる気持ちになるが、読んでおきたい。まとめて「毒」のある記事…。
 
「高プロ」賛成、企業の28% 裁量労働拡大支持は35%(共同通信 2018/4/7)
https://this.kiji.is/355299548769633377
 安倍政権が掲げる働き方改革について主要企業約100社に尋ねたところ、一部専門職を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)に賛成する企業は28%で、裁量労働制の対象拡大も支持が35%にとどまったことが7日、共同通信のアンケートで分かった。いずれについても約6〜7割の企業が「どちらとも言えない」と賛否を保留した。
 裁量制はデータ不備の影響で、6日に国会提出された働き方改革関連法案から削除されたが、政府は今後も裁量制拡大を目指す方針。高プロは法案の柱で、後半国会の最大の焦点となる。

>私大教連・私立大学新入生の家計負担調査2017年度調査(pdf)
http://tfpu.or.jp/wp-content/uploads/2018/04/2017kakei-hutan-chousa20180404.pdf

「教育格差「当然」「やむをえない」6割超 保護者に調査(朝日新聞 2018年4月5日)
https://digital.asahi.com/articles/ASL3S5VPYL3SUTIL014.html?ref=nmail
 朝日新聞社とベネッセ教育総合研究所が共同で実施する「学校教育に対する保護者の意識調査」の結果が4日、まとまった。全国の公立小中学校の保護者7400人に聞いたところ、教育格差について「当然だ」「やむをえない」と答えた人は62・3%となり、4回の調査で初めて6割を超えた。また、子どもの通う学校への満足度は83・8%で、過去最高となった。
◆教育格差、「容認」の考えを持つのはどんな保護者?
 調査では「所得の多い家庭の子どものほうが、よりよい教育を受けられる傾向」について「当然だ」「やむをえない」「問題だ」の3択で尋ねた。
 「当然だ」と答えた人は9・7%で、2013年の前回調査の6・3%から3ポイント以上増えた。1回目の04年、2回目の08年(ともに3・9%)からは6ポイント近い増加だった。また、「やむをえない」は52・6%で、初めて半数を超えた前回の52・8%とほぼ同じ。格差を容認する保護者は計62・3%となった。
 一方、「問題だ」は34・3%で前回の39・1%から5ポイント近く減少。08年調査の53・3%と比べると、19・0ポイントも減ったことになる。
 調査では今後の日本社会で「貧富の差が拡大する」かどうかも聞いた。「とてもそう思う」「まあそう思う」の合計は85・0%で、多くの保護者は格差が拡大すると見ていた。
 子どもが通っている学校については「とても満足している」「まあ満足している」「あまり満足していない」「まったく満足していない」の4択で尋ねた。「とても」は13・5%、「まあ」は70・3%で、合計した「満足度」は83・8%だった。
 この質問への回答を初回調査からみると、満足度は73・1%(04年)、77・9%(08年)、80・7%(13年)と毎回高くなっており、今回も過去最高だった。特に、「とても」の保護者は04年の4・9%と比べて、8・6ポイント増えた。小学生の保護者だけをみると満足度は86・8%で、中学生の保護者の77・8%より9・0ポイント高かった。

格差容認、都市部ほど強く 高学歴・経済的にゆとり 朝日・ベネッセ調査(朝日新聞 2018年4月5日)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13436964.html?ref=nmail_20180405mo
 経済的に豊かな家庭の子どもほど、よりよい教育を受けられるのは「当然だ」「やむをえない」。子どもが公立小中学校に通う保護者のうち、6割以上がこうした教育格差を容認していることが、朝日新聞社とベネッセ教育総合研究所の共同調査でわかった。「格差容認」の考えを持つのはどんな保護者か。
 経済的なゆとりについて聞いた質問で「ある」と答えた人は72・8%が容認していた。一方、「ない」人は55・7%で、17・1ポイントの差があった。保護者の学歴別にみると「父母とも大卒」は69・9%が容認し、「父母とも非大卒」の57・4%よりも12・5ポイント高かった。住んでいる自治体の規模別では「特別区・政令指定市」で67・4%、「人口15万人以上」で61・2%、「5万〜15万人未満」で60・9%、「5万人未満」で55・0%の保護者が格差を容認し、人口が大きいほど多い傾向にあった。
 学校段階別にみると、小学生の保護者の64・3%、中学生の保護者の58・1%が格差を容認し、小学校の方が6・2ポイント高かった。ベネッセ教育総合研究所の木村治生主席研究員は「格差を容認する人は経済的にゆとりがあり、都市部に住む保護者に多い。こうした保護者の子どもが、私立中学に進学する可能性が高いことが影響しているのではないか」と分析する。
 ■教育政策の考え方にも影響
 教育格差はどのような形で表れているのか。経済的に「ゆとりがある」保護者の場合、塾や習いごとなど学校外の教育に月2万円以上払う人は34・1%おり、「ない」保護者の19・7%の倍近い。
 経済的ゆとりは教育政策の考え方にも影響した。「教育予算は、所得の低い家庭の子どもに対して手厚く使われるほうがよい」か「全員に等しく使われるほうがよい」かの質問では、「ある」保護者の30・2%が「所得の低い家庭の子どもに手厚く」に近いと答え、「ない」保護者の44・7%より約15ポイント低かった。
 ■格差、知らぬ間に広がる恐れ 山田哲也・一橋大教授
 データの精査が必要だが、教育格差を「当然だ」「やむをえない」と答えた保護者には、二つの異なるタイプがいると考える。
 一つは父母ともに大卒で経済的ゆとりがあり、いわば「自己正当化」しているタイプ。もう一つは父母の学歴が相対的に低く、経済的にも厳しい層が現状を「追認」している形だ。どちらの層も、学校への満足度は高いが、大きな違いがある。ゆとりがある層は先生の教育熱心さなどに「満足」しつつ、学校で足りないと感じた部分は他の手段を選べる。ゆとりのない人たちはそうはいかない。双方が満足し、気がつかない間に、格差が広がってしまう恐れがある。
 経済状況が悪化し、企業の採用が厳しくなれば格差が顕在化する。気になるのは、格差を「当然だ」と考える人が1割近いことだ。行政が格差是正の施策を打ち出しても、認めない懸念もある。
 ■社会の分断、許してよいのか 耳塚寛明・お茶の水女子大教授
 調査では、教育格差を容認する人々が多数派を占めることが、動かしがたい趨勢(すうせい)だと明らかになった。誰にも機会が平等に開かれた社会の実現は明治以来、日本社会が追求してきたテーマだ。その中で、生まれがものをいう社会を半数以上の人が容認するのは、歴史的変動にほかならない。
 変化が特に大きかったのは、2008年と13年の間だ。メディアなどで「子どもの貧困」が取り上げられ、人々が認識するようになった時期と重なる。貧困の再発見は皮肉にも、「やむをえない」というあきらめを広めたのだと思う。
 教育予算も「所得の低い家庭の子に手厚く」より、「全員に等しく」という政策が支持されている。社会が分断されてゆくことを許してよいのか。一縷(いちる)の望みは、格差を「問題」と考える層がなお3人に1人いること。この道の行く手にどういう社会が待っているのか、今こそ考えるべきだ。

暮らし向き「ゆとりなくなってきた」増加(NHK 2018年4月5日 16時18分)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180405/k10011391911000.html
 個人の暮らし向きについて「ゆとりがなくなってきた」と感じる人が増えていることが日銀の調査でわかりました。
 日銀は、全国の個人に対して3か月ごとに景気の実感などを聞いていて、今回は、ことし2月から先月上旬までに2000人余りから回答を得ました。
 それによりますと、足元の物価について「かなり上がった」、「少し上がった」という回答が合わせて73%余りとなり、前回の調査より6ポイント余り上昇しました。
 また、暮らし向きについては「ゆとりが出てきた」とする割合から「ゆとりがなくなってきた」とする割合を差し引いた値がマイナス35.3ポイントと、前回の調査より1.6ポイント低下しました。
 これについて日銀は、天候不順の影響による野菜価格の高騰やガソリン価格が高い水準で推移したことなどが背景にあると見ています。
 景気が緩やかに回復しているとされる中でも、個人の生活実感が悪化しているという声が増えていることが浮き彫りになり、日銀は「春闘の賃上げが反映される次回以降の調査を注視したい」としています。

氷河期世代没落で生活保護費30兆円増、衝撃の未来図(ダイヤモンド 2018.4.2)
http://diamond.jp/articles/-/165543
 『週刊ダイヤモンド』4月7日号の第1特集は「1億総転落 新・新階級社会」です。格差や貧困の問題が放置されている間に、日本には新しい階級社会がやってきていた!中間層が没落し、富裕層からアンダークラスまでの階級化に突き進む日本。貧富の二極化は社会にきしみを生みはじめている。その象徴的な例は、氷河期世代の雇用環境悪化による「生活保護転落リスク」である。
 「このまま何も手を打たなければ、30年後には独身・低収入の高齢者であふれ返る。日本の財政は年金ではなく、生活保護で破綻する」
 こう警鐘を鳴らすのは山田昌弘・中央大学教授だ。
 日本が超高齢化社会に突入したことで、年金や医療をはじめとする社会保障費は増大。2025年度は151兆円に達すると試算されている。一般会計歳出の3分の1を占めるまでに膨れ上がった社会保障費に対応するため、政府は「社会保障と税の一体改革」を声高に叫んでいる。
 日本の財政破綻の足音は着実に近づいており、さまざまな主張が飛び交っているが、見落とされていることがある。それこそ、就職氷河期世代の生活保護落ちリスクである。
 こうした議論で使われる試算の多くは、人口ピラミッドの変化に基づく将来推定がメーンで、世代の“質”の変化があまり考慮されていないのだ。
 氷河期世代はかつての世代とは異なり、非正規雇用が増え、収入も少ない。老後の生活資金を蓄えることもままならず、生活保護に頼らざるを得なくなる人が増大するリスクをはらんでいる。しかし、こうした潜在的なリスクについて論じた試算はほとんど存在しない。
 そこで『週刊ダイヤモンド』では、氷河期世代の働き方の変化が、将来どのようなインパクトをもたらすのかを独自に試算した。氷河期世代の区分は諸説あるが、ここでは試算を簡便にするため、17年時に35〜44歳の層を氷河期世代と仮定した。
◆非正規・無業者の生活保護予備軍は147万人
 まずは、以下の図版をご覧いただきたい。
 氷河期世代で非正規雇用がどれだけ増えているかは、年齢別の就業状態がまとまった就業構造基本調査で把握できる。最新の12年版の30代を氷河期世代として扱い、02年版の30代と比較した(17年版の公表は今年8月)。
 データでも明確なのは雇用環境の悪化だ。男性は前の世代と比べて正社員が48万人も減った一方で、非正規雇用が40万人、無業者が4万人増えた。
 また、女性の社会進出により、正社員または非正規雇用で働く女性は80万人増え、無業者が87万人減った。これは前の世代と比べて、専業主婦層(無業者・既婚家事)が働きだしたことが主な要因だ。夫だけの収入では世帯を支え切れず、働かざるを得ない状況に追い込まれているともいえる。
 氷河期世代の男性の稼ぎは減ったものの、働く女性が増えたことによる影響の方が大きいため、世代全体の生涯賃金を合計すると前の世代よりも増える。
 ただ、国の財源という視点では、収入が多く、高い所得税を見込めた男性正社員が減ったことは痛い。現時点での生涯賃金を基に、氷河期世代が生涯支払う所得税の合計を試算すると95.8兆円となり、前の世代と比べて1.5兆円も減ってしまうのだ。
 続いて、氷河期世代の未来のセーフティーネットに掛かるコストを試算した。国の支出という視点では、706万人に上る非正規雇用・無業者の中でも、最もコストが掛かるのは、老後を生活保護で暮らさざるを得ない人々だ。
 異論はあるかもしれないが、単身世帯の方がこのリスクは高いため、非正規雇用・無業者のうち、既婚者をここでは除いた。さらに、国民年金の完納者や免除者は対象外とした。その上で、65歳までの生存率を考慮し、潜在的な老後の生活保護受給者数を推計した。
 そして導き出されたのが、氷河期世代の老後の“生活保護予備軍”は147.1万人に上るという数字である。無業者に限れば、女性は専業主婦が多いため、男性の方が人数としては多くなる。
 現在の生活保護受給者は全世代で約213万人だが、氷河期世代が高齢者に突入するとその7割に匹敵する人数が、生活保護に依存せざるを得ないのだ。
 それではその費用はいったい幾らになるのか。昨年末に厚生労働省が公表した、生活保護受給額見直し後の大都市部の高齢単身世帯の生活扶助月額7万6000円と、現時点での65歳の平均余命(男性19.6年、女性24.4年)を基に推計すれば、なんと29.9兆円に達するのだ。
 ここで強調したいのは、計算したのは生活扶助だけで、生活保護費の48%を占める医療扶助や、住宅扶助などを考慮していない、少なめに見積もった試算であることだ。雇用環境が悪化した氷河期世代では、税収減と生活保護費増大のダブルパンチで、潜在的なコストは30兆円を超えるのだ。
 当然ながら、従来論じられている年金や介護、医療などの社会保障費はここには含まれない。氷河期世代への対策の遅れが、財政破綻への歩みを加速させている。
◆格差の固定化で訪れる「新・階級社会」の実像!
 日本で格差拡大が始まったのは1980年前後と言われています。もう40年近くも格差拡大が続いていることになります。
 日本で格差が社会問題としてクローズアップされたのは、2006年のことでした。当時、大手製造業で偽装請負が発覚したり、ワーキングプア(働く貧困層)の存在が明らかになったりしたことで、格差拡大や貧困の連鎖に警鐘を鳴らす“格差ブーム”が訪れたのです。
 それから10年余り。空前の雇用情勢の改善ぶりを背景に、あたかも日本から格差問題は消えてしまったかのようにも見えます。
 でも、現実は違います。消えてなくなるどころか、むしろ格差は世代を超えて固定化し、日本社会には格差社会よりもさらにシビアな「新たな階級社会」が訪れているのです。それは、生まれた家庭や就職時期の経済状況によって階級が決まる“現代版カースト”とも言える世界です。
 特集では、「超人手不足」「就職氷河期」「日本人の横並び意識」という3つのキーワードを有機的に理解することで、「新・階級社会」の実像を浮かび上がらせました。
 格差拡大社会の未来は、そう楽観視できるものではありません。
 例えば、氷河期世代の雇用環境悪化は、ボリュームゾーンの働き手の転落、生活保護費増大という二重の意味で「社会のコスト」となって国民に跳ね返ってきます。
 他人事と片付けることはせずに、「あなたのすぐそばにある格差・貧困問題」を考えるきっかけにしていただきたいと思います。

見えぬ危機に無策 年金・医療で巨額借金 平成の30年(日本経済新聞 2018/4/7)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29094500W8A400C1000000/
 バブル経済の絶頂を始点とする平成時代。改革という言葉がこれほど声高に叫ばれたときも少なかろう。昭和の時代に前提とした経済成長と人口増は逆回転を始め、社会保障と消費税の改革は行きつ戻りつした。残ったのは目もくらむ巨額の借金である。
 平成が人口危機とともに始まったことはあまり知られていない。出生率1.57ショックはまさに元年だった。
 その初期、130万前後だった年間出生数は今や百万を切った。この間、高齢者は2千万人増えた。いびつな人口ピラミッドは改革の必要性を訴えかけたが、人口危機は昭和の石油危機やバブル後の金融危機と違って見えにくい危機だ。自覚症状が乏しい慢性病のように社会保障と国の財政を侵食し続けた。
 経済の長期低迷と相まって年金・医療制度を形づくった昭和の土台は崩れた。現役層の厚みは奪われ、生産者・消費者・納税者が減る。だが政治は見ぬふりを決め込んだ。将来の出生率回復を前提にした年金財政の推計が典型だ。2004年改革で堅い予測を使うことを唱えた厚生労働官僚は「保険料を大きく上げなければならないじゃないか」と与党議員に叱責された。
 1.57ショック後も出生率の低落は止まらず、05年に1.26を記録した。まれにみる超少子国家である。端午の節句を控えた4月末、首相官邸の前庭に泳ぐこいのぼりの親子に子ゴイが1尾しかいないのを見上げた小泉純一郎首相は「1人はまずいなあ。3人は産んでもらわないと」。
 官邸職員は慌てて子ゴイを増やした。以来、歴代の少子化担当相の取り組みに濃淡はあるが、暮らしと仕事の両立支援は少しずつ効き目を表し出生率は1.4台に復した。
 難航したのは年金と医療費の伸びを圧縮する改革だ。厚労省はその必要性を理解していたが、給付減はまかりならんと叫ぶ族議員の顔色を気にせざるを得ない。背後には国政選挙に影響力を及ぼそうとする圧力団体が控えていた。
 節目は3回。小泉政権で存在感を高めた財務省と経済財政諮問会議、福田康夫首相がつくった社会保障国民会議、民主党政権の大混乱と社会保障・税一体改革だ。
 現公正取引委員長の杉本和行氏が首相秘書官から財務省に復帰した01年、診療・介護報酬改定と年金改革が走り出していた。「社会保障と財政の持続性は一体だ」を旗印に杉本氏は主計局独自の改革案を矢継ぎ早に打ち出した。医療は(1)診療報酬の伸びを成長率に連動させる(2)窓口負担は年齢でなく所得に応じて決める(3)保険診療と自由診療を組み合わせる混合診療を広げる――など。年金は既受給者に大胆に切り込むよう唱えた。
 塩川正十郎財務相は「何でここまでやるんや」と、ふに落ちぬ様子だったが、財政規律に直結すると悟ると諮問会議に坂口力厚労相を呼んで改革を迫った。財務省案には混合診療のように限定的ながらも日の目を見た策がある。
 一方の年金は既受給者への切り込みにいまだに政治が右往左往している。04年改革のうたい文句「百年安心プラン」は砂上の楼閣であろう。
 第1次安倍政権も改革の旗を掲げたが、年金記録問題という想定外の不祥事が制度改革を脇へと追いやる。社会保険庁のでたらめさが制度不信を高める悪循環が広がり、その後始末も半ばに政権は不本意な退陣を余儀なくされた。
 福田政権が官邸に設けた国民会議はその実、野党を政策論議に引き込むための装置だった。泥仕合をやめ同じテーブルに着こうという呼びかけだ。諮問会議の民間議員が基礎年金の財源に消費税を充てる改革を提起したのも、この頃だ。仕掛け人の八代尚宏昭和女子大特命教授は「消費税方式は民主党の最低保障年金と共通性があり、政府が後押しするのはまずいという空気があった」と振り返る。福田首相のもくろみはついえた。
 民主党政権の時代は改革後退期だ。政権公約の目玉、子ども手当と年金改革は財源を示せず頓挫し、有権者に愛想を尽かされた。野田佳彦首相が成就させた一体改革の3党合意が唯一の成果と言ってよい。だがこれは増税に必要な措置を講ずると定めた麻生政権の置き土産があったからこそ。法案成立に命を燃やしたのは、与謝野馨財務相だ。
 さて、現安倍政権である。首相在任は小泉氏を超えたが森友問題で深手を負った財務省に勢いはない。働き方改革法案を巡る失態で厚労省と官邸の間はぎくしゃくしている。諮問会議は存在感が薄い。
 国の財政状況を示すグラフに一般会計の歳出と税収の推移がある。ワニが口を開いたようにみえる形状は社会保障・税改革の来し方を映す。口の開き始めは平成の始まり。次の消費税増税は平成の世が明けた19年10月だ。今やその雲行きも怪しくなってきた。(大林尚)
【証言】江利川毅・元内閣府次官・元厚労次官
 平成は1.57ショックで幕を開けた。少子化に政府が無策だったわけではない。厚生省は1994年のエンゼルプランで一歩を踏み出し、小泉内閣は少子化担当相を置き、呼応して経済界も対策を練った。国家にとって少子化は重い課題だが、個人はさほど痛みを感じていない。消滅する可能性がある地方自治体の議論などを機に、問題意識が深まった。
 中央省庁の再編とともにやめてしまった中長期の経済計画や国土計画があればと思う。人口や財政の問題を長い視点で考え、国を挙げて警鐘を鳴らせたからだ。
 内閣府官房長、次官として消費税は小泉内閣で上げてほしいと願った。強い政権だからだ。しかし首相は「歳出を削りに削り、国民が悲鳴を上げるのを待つ。増税はその後」を信条にした。国債の新規発行を30兆円に抑える目標は厳しいものだが、30兆円は借金を容認することだ。悲鳴を上げるまで歳出を切ったわけでもなかった。
 社会保障は削ればいいというものではない。小泉時代は2度、診療報酬本体を下げた。評価する声がある一方、医療の現場が痛んだのも事実だ。厚労次官として古巣に戻ったとき「もう無理です」と担当局長らに訴えられた。
 今の社会保障の基本を設計したのは人口増と高度成長の時代だ。80年代は制度改正で対応し、平成に入ってバブル経済が崩壊し、改革が意識され始めた。問題の根源は氷河期という言葉に象徴される若者の就職難と高齢者の寿命の伸びにある。若者は社会の支え手になれず、かたや人の生涯にかかる経費は増大し、働く期間を延ばさねば乗り切れない。この構造変化に改革は対応してきただろうか。
 政治家も行政官も、経済人も個々人も気づくのが遅れた。私自身そう思い至ったのはこの数年だ。
【キーワード】
・1.57ショック
 ひとりの女性が生涯に生む子供数の理論値を示す合計特殊出生率が1989年(平成元年)に1.57まで下がったことを指す。厚生省が人口動態統計として公表した90年6月、丙午(ひのえうま)66年の1.58を下回ったことが判明した。出生率が2.07を下回った国は総人口を保つことが不可能になる。人口問題の研究者の間では話題になったが、日本経済がバブル景気に浮かれていたこともあり、いずれやってくる人口減少が経済成長を阻む要因になるだろうという警告はかき消された。
 出生率が下がるきっかけのひとつに、48年の優生保護法成立を経て経済的理由による人工妊娠中絶を合法化したことがある。70年代前半の第2次ベビーブーム期を過ぎ、出生率は行きつ戻りつしながらも緩やかに降下し続けた。今や年間の出生数は百万人の大台を下回るまで深刻化している。
・百年安心プラン
 年金改革は将来推計人口の見直しなどに伴い、ほぼ5年に1度のペースで厚生省(厚生労働省)が原案をつくり、国会審議を通じて与党の賛成多数で成立させるのが常で、委員会での強行採決も頻繁だった。小泉政権が2004年に手がけた改革は、保険料引き上げについて打ち止め感を出さない慣例を破り、将来負担の固定に重点を置き、年金給付はその範囲にとどめるのを原則にした。
 当時、厚労省はこの方式によって2100年度まで保険料・給付の水準を変えなくとも年金財政は安泰だという見通しを示し、一部の与党政治家が「百年安心プラン」をうたい文句に選挙運動を展開した。見通しは机上の計算にすぎないのだが、野党は「本当に百年もつのか」という格好の攻撃材料を得て、自公政権はその後、百年安心の「亡霊」に悩まされることになった。
・消えた年金
 厚生労働省外局の社会保険庁を舞台にした年金スキャンダル。2007年に発覚、管理する年金記録のうち約5000万件が名義不明だった。保険料の納付記録が残っていない事態も判明。前者を宙に浮いた記録問題、後者は消えた記録問題と呼ぶ。名寄せに追われ、延べ1億人の受給者・加入者に加入歴を示す「ねんきん特別便」を送った=写真。
 社保庁は組織や人事の規律が甘く、その体質を厚労省幹部が見ぬふりをしていたことが不祥事を増幅させた。後始末に翻弄された第1次安倍政権の退陣を早める一因になった。同庁は民間色を強めた日本年金機構に衣替えしたが、年金記録にまつわる不祥事は今も続いている。
・シルバー民主主義
 社会保障や税に関する高齢者の既得権益を守る政治行動が優先される現象。日本が年金、医療制度を確立させた1960年初頭は人口ピラミッドが末広がりで高齢者はごく少数派だった。85歳以上を例にとると、60年は総人口の0.2%にすぎなかったが、2015年には3.9%に上昇した。高齢者の持続的増加が政治に影響を及ぼすのは、先進国に共通しているが「高齢化のスピードが速い日本は特にその影響が大きい」(八代尚宏『シルバー民主主義』)。
 14年の衆院選で年齢別投票率は20代の32%に対し60代は62%に上る。政治家が高齢有権者に目を向けがちなのも、うなずける。エコノミストの島沢諭氏は「高齢者は政策決定の主導権を持っているわけではない。主導権は政党にあるシルバーファースト現象が本質だ」と説いている。

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『OLPC一般向けXO-1の日本国民購入を不可能にした「技適マーク認証制度」を徹底打倒せよ!!!』と叫ばなかった連中が教育格差話をしても説得力なんて無いね(一笑一笑)


また、こうした格差妄言を吐き散らしている害虫は、
「自ら学ぶ努力」とか「構成主義的学習」から全力逃亡しているから嗤わせてくれます。
韓国人と仕事して困ったことまとめ
2018/10/25 21:20

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