シジフォス

アクセスカウンタ

zoom RSS 労委命令に実効性を付与しないと不当労働行為は「やり得」

<<   作成日時 : 2017/07/07 06:15   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

中労委委員が大きく替わり、永らく中心にいたHさんが退任したこともあって参加を躊躇した労委労協命令研究会だったが、レポート役が旧知の元・都労委事務局のSさんということで昨日は参加。ただ神奈川県労委の労働者委員がほとんど参加しているのに比し、都労委委員が少ないことにやや危惧。連合の初代政策局長だった中労委・Nさんが労委労協の事務局長になり一緒に始めた研究会だが、最初から参加しているのは講師をお願いしている宮里弁護士と自分と事務局関係者だけで、四半世紀の間に大きく様変わりしてきた。労委そのものも労組法自体は約70年変っていないが、肝心の労働運動・労働組合が弱体化してしまったため、個別紛争解決システムの側面が強くなっている。しかし、本来の集団的紛争解決システムとしての機能にこそ労働委員会制度の意味があり、制度改革はどうしても必要だと思う。しかし…

昨日とりあげた命令は今年3月に出された福岡教育大学事件であり、当初命令文を一読した限りでは議論になるほどの問題性はあまり感じなかった(反省!)。しかし、さすがにレポーターのSさんは「使用者の言論自由と支配介入」「ポストノーティス」「救済方法のやり方」の3点について提起し、活発な議論になった。中労委命令後、現在は行訴にもちこまれているので、詳細は避け、中労委のHPから「命令概要」だけ添付するにとどめるが、この当該労組が何を求めて労委申立を行ったのか、個人的には悩む事件だった。525名の教職員の内、申立時100名を組織する組合だが、「大学の労使関係」の異様さばかりが目立つ。同じく命令研講師をつとめる田端さんが、「かつては教授会による自治が保障されていた大学が、法人改革にともない文部省によって学長に全権限を集約させた結果」だと説明してくれたが、そのせめぎ合いがこの事件の深刻さを招いている。

この命令研では、本来は事件を担当した労働者委員がレポートするが、今回は委員交代で退任したため発言がなかった。しかし、労委である以上「紛争解決」に主眼をおいて事件進行がなされたはずで、この事件でも和解が打診されたはずだが、行訴にまで至っている。現行の労委制度では命令を公布しても紛争は解決しない。したがって担当三者委員と事務局は和解解決に全重点を注ぐ。とりわけ労使委員は「参与」として当事者とつきあうのだが、そこで委員の質が問われる。自らの労働運動への経験と信念があってこそ当事者から信頼され、困難な紛争でも解決に至る道筋が見えてくる。また使用者委員は、経営者の立場から紛争長期化の愚を指摘し、健全な労使関係の必要性を訴える。しかし、この事件にはその気配が感じられないし、代理人の姿さえ見えなかった特異さがある。

議論の最後に「命令書」の最後に記載されている「付言」が話題になった。本来は、命令書に反映されるべき重要な指摘が、まるで法律の付帯決議のように記載されていることがよく見受けられる。この事件でも「(法人が)不当労働行為の認定を真摯に受け止め、その上で労使がより一層意思疎通を図り、相互に協力して労使関係の安定と法人の発展に尽力することを強く希望するものである」と記載してある。労働委員会とは、また労委命令とは何なのか、考えさせられる事件であった。現役時代(集団的紛争が主役だった頃)、件数が多く、内容も解決方法も困難な事件は学校と病院だった。象牙の塔や白い巨塔と揶揄される世界の労使関係は今も凄まじいようだ。労委制度に実効性を付与しない限り、不当労働行為は「やり得」のままだ。

福岡教育大学不当労働行為再審査事件 (平成28年(不再)第12号)命令書交付について(中労委 2017.3.23)
http://www.mhlw.go.jp/churoi/houdou/futou/dl/shiryou-29-0323-1.pdf
中央労働委員会第三部会(部会長 三輪 和雄)は,平成29年3月22日,標記事件に関する命令書を 関係当事者に交付しましたので,お知らせします。 命令の概要は次のとおりです。
【命令のポイント】 〜組合のビラ配布活動を信用失墜行為であるなどとする学長の発言等が不当労働行為に当たるとした 事案〜 学長が,全教職員を対象とした説明会の席上,組合のビラ配布活動を信用失墜行為であるなどと発 言し,同発言を公式ウェブサイトに掲載したことは,組合の活動を萎縮させるなど組合の弱体化を図 るものであり,労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
T 当事者 再審査申立人:国立大学法人福岡教育大学(「法人」)(福岡県宗像市) 教職員525名(平成26年12月現在) 再審査被申立人:福岡教育大学教職員組合(「組合」)(福岡県宗像市) 組合員約100名(平成26年12月現在)
U 事案の概要
1 本件は,法人が,@A1ら組合員が行ったビラ配布(「本件ビラ配布」)を信用失墜行為であるなどと発言したこと(「本件学長発言」)及び同発言を法人のウェブサイト(「公式ウェブサイト」)に掲載したこと,AA1を大学院教育学研究科長(「研究科長」)に任命しなかったこと,BA2を教育研究評議会評議員(「評議員」)に指名しなかったこと,CA2が主任を務める講座について,学長が自ら教員人事ヒアリングを行わず他の理事に行わせたこと等が不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審福岡県労委は,上記@ないしCは不当労働行為に当たると判断し,法人に対し,公式ウェブサイト掲載 文書の一部削除,文書手交及び学内イントラネットへの掲示を命じ,その余の救済申立てを棄却したところ, 法人がこれを不服として再審査を申し立てた。
V 命令の概要
1 主文の要旨
本件再審査申立てを棄却する。
2 判断の要旨
⑴ 本件学長発言及び同発言を公式ウェブサイトへ掲載したことは労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか
 本件学長発言で言及されている本件ビラ配布は,執行委員会で機関決定の上,実施されたものであり, 記載内容や表現ぶりにおいても穏当なものというべきで,配布の際も特段の混乱があったともうかがわれな いことなどから,正当な組合活動であるといえる。そして,学長が本件ビラ配布を信用失墜行為であるなどと発言した上,教育学部長と研究科長に今回の事案にどう対応するのか文書で提出するよう命じていることは,本件ビラ配布を行った組合員に対し,何らかの不利益を与える可能性を示唆したものとみることができる。よって,本件学長発言及び同発言を公式ウェブサイトに掲載したことは,組合員の組合活動を萎縮させ 組合の弱体化を図るものであり,労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
⑵ A1を研究科長に任命しなかったことは労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に該当するか
 法人は,A1を研究科長に任命できない理由として,A1が本件ビラ配布に参加したことを挙げ るが,前記⑴のとおり,本件ビラ配布は正当な組合活動である。そうすると,法人は,A1が正当 な組合活動を行ったことの故をもって,A1を研究科長に任命しなかったものというほかなく,こ れによりA1は,職務上,経済上の不利益を被ったものといえる。よって,法人がA1を研究科長 に任命しなかったことは,労組法第7条第1号の不当労働行為に当たり,また,組合活動を萎縮さ せて組合の弱体化を図るものであるから,同条第3号の不当労働行為にも当たる。
⑶ A2を評議員に指名しなかったことは労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に該当するか
 法人は,A2が法人を被告とする未払賃金請求訴訟(「本件訴訟」)の原告であることを理由にA 2を評議員に指名することを拒んでいるが,本件訴訟は,組合の臨時総会で決定されて組合が全面 的に支援するもので,A2は組合書記長としての立場から原告となったものであり,訴訟の対象が 賃金の減額という基本的な労働条件に関わるものであることも考慮すれば,本件訴訟の提起やその 訴訟活動は正当な組合活動といえ,法人も本件訴訟の提起等が組合活動の一環であると認識してい たことは明らかである。そうすると,法人は,A2が正当な組合活動を行ったことを理由として, A2を評議員に指名しなかったものというほかなく,これは,A2の講座主任としての影響力等の 低下を招く不利益な取扱いといえる。よって,法人がA2を評議員に指名しなかったことは,労組 法第7条第1号の不当労働行為に当たり,また,組合活動を萎縮させて組合の弱体化を図るもので あるから,同条第3号の不当労働行為にも当たる。
⑷ A2が主任を務める講座について,学長がヒアリングを行わず,他の理事に行わせたことは労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に該当するか
 法人は,A2が主任を務める講座の教員人事ヒアリングを学長が行わなかった理由について,A 2が本件訴訟の原告であるためと説明しているが,前記⑶のとおり,本件訴訟は正当な組合活動で あり,本件訴訟の提起等が組合活動の一環であることを法人が認識していたことも明らかである。 そうすると,上記ヒアリングを学長が行わず,他の理事に行わせたのは,A2の正当な組合活動を 理由とするものというほかなく,これはA2の講座主任としての影響力等の低下を招く不利益な取 扱いといえる。よって,上記ヒアリングを学長自身が行わず,他の理事に行わせたことは,労組法 第7条第1号の不当労働行為に当たり,また,組合活動を萎縮させて組合の弱体化を図るものであ るから,同条第3号の不当労働行為にも当たる。
【参考】初審救済申立日 平成26年12月19日(福岡県労委平成26年(不)第10号)/初審命令交付日 平成28年 2月10日/再 審 査 申 立 日 平成28年 2月24日


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
労委命令に実効性を付与しないと不当労働行為は「やり得」 シジフォス/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる