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zoom RSS 日本だって家事労働者ILO条約の批准を

<<   作成日時 : 2011/06/03 07:29   >>

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日本経済新聞が昨日の朝刊でILOの「家事労働条約」の記事を掲載していた。実は、かねてから労基法116条に定められた「労基法の適用除外」について疑問と関心をもっていた。ご存じない方のために(念のため?)第116条の2項には「労働基準法は、同居の親族のみを使用する事業、および、家事使用人には、適用しない。」と定めている。
第1項の船員などはある程度理解できるが、家事使用人をことさら労基法から除外する理由に納得できなかった。メイドなどであれば、労働時間、休憩など関係なくいくらでも酷使できるということなのか…。しかし、この問題は、万国共通だということで、まず日経の記事を紹介。

>家事労働者保護で新条約、ILO総会が開幕(日経 2011/6/2)
 【ジュネーブ=藤田剛】国際労働機関(ILO)の年次総会が1日、ジュネーブで開幕した。会期末の17日までに、家事労働者の労働基準を定めた条約を採択する予定。条約案には、1週間に最低でも24時間連続の休暇を1回与えることや、18歳未満の家事労働者から義務教育や職業訓練の機会を奪わないことなどを明記。家庭内に住む場合はプライバシーを保護することも盛り込まれた。
 ILOによると、各家庭に雇われ、生計を立てる手段として炊事や洗濯、育児、介護などの家事に従事している人を家事労働者と規定。企業に雇用され、各家庭に派遣される労働者は含まない。
 多くの国では家事労働者に関する労働基準がなく、長時間労働や児童労働、虐待などが問題になっていた。このため、たくさんの家事労働者を国外に送り出しているフィリピンなどが条約の締結を要求し、各国がこれを受け入れた。


この記事の最後に、HPの方には載っていた「条約を批准した国は国内法を整備する義務を負う。日本政府は『国内で家事労働者の保護が問題になっていない』との理由で当面批准を見送る方針だ。」との部分は、新聞では省かれていた。ILOで問題になっていることが、日本では問題になっていないということ、さらには相変わらず労働者保護に関心を見せない官僚にも腹が立つ。ちなみにお隣の韓国では問題視されており、レイバーネットにこんな記事が紹介されていた。

>家事労働者も『労働権』が認められるか? 6月1日、ILO総会『家事労働者保護協約』で議論...「韓国政府は賛成を」(2011.05.17)
 6月1日から開かれるILO(国際労働機構)の総会で家事労働者保護協約が議論されることになり、韓国政府が家事労働者協約に賛成することを要求する声が高まっている。現在、韓国社会で家事サービス領域に対する雇用需要は着実に上っているが、家事労働者は労働基本権も認められない実情だ。特に勤労基準法上の労働者と認められないため、家事労働従事者への実質的な統計も不明確だ。
 一般的に韓国家事労働者は30万人ほどと推測されているが、場合によっては60 万人とも集計されている。また彼らは勤労基準法第11条『家事使用人適用除外』という規定のために、労災保険、雇用保険などの社会保障制度からも除外されている。ただし、政府の社会サービス雇用に参加している療養保護士、社会サービス雇用、バウチャー事業といったケア労働者は勤労契約締結と社会保険適用などの保障を受けているが、これに該当する労働者は8万人ほどしかいない。そのため全国保健医療産業労働組合、全国女性連帯など14の団体で構成された『ケア労働者法的保護のための連帯』は5月17日午前、世宗文化会館の前で記者会見を行い、政府の家事労働者ILO協約賛成を要求した。
 この席で家事管理士のキム・ジェスン氏は「5年家事管理士をしているが、雇用が安定せず休みの日が多く、経済的な負担が大きい」とし「また手首、膝、肩の痛みと湿疹などでからだに無理がくるが、労災保険が適用されず治療も受けられない」と訴えた。特にこうした家事労働者は一般に民間職業紹介所に 10%ほどの手数料を払わなければならず、持続的で安定した雇用情報が得られない。
 そのためILOは、2008年3月、第301次理事会で彼らの労働基準を作るために、『家事労働者のための良質の雇用』という議題を採択し、2年間議論をすることにした。また、1次協議を経て、△家事労働者の労働三権と強制労働撤廃、 △斡旋業者の使用者性認定と違反時処罰の制度化など40項目の合意条項を決め、 6月の総会でこれを補充する勧告を作ることを決めた。これにより6月1日からのILO総会では、『家事労働者のための良質の雇用』 2次議論が行われ、16日にはこれに関する協約とこれを補充する勧告採択のための投票が進められる予定だ。
 記者会見団は、「中国、日本、インドなど、アジア太平洋地域の各政府と違い、韓国政府は明確な立場を明らかにしていない」とし「韓国政府の棄権は、家事労働者のための国際基準と一部国家の批准による実質的な家事労働者の保護の機会を奪う卑怯な行為であることを警告して、協約と勧告採択に賛成することを公式に要請する」と明らかにした。


ILO駐日事務所がメールマガジンを発行しており、その第96号2011.5.31に「家事労働者のディーセントワーク」との長文が掲載されている。そこには実に深刻な内容が書かれており、いや知らないことに改めて恥じ入った。長文ゆえ、要約しつつ一部だけ紹介する。

>家庭内で介護や掃除をして賃金を得ることは、世界中で何百万人もの労働者(その大半を女性が占める)が従事する大変大切な職業の一つである。家事労働は労働力のかなりの割合を吸収しており、開発途上国では就業者全体の5%から9%の間、先進国でも就業者全体の2.5%にまで及んでいる。
 家事労働者の仕事は、料理、掃除、子ども・高齢者や障害者の世話を含み、家畜の世話に及ぶことさえある。圧倒的多数を女性が占め、その多くが移民労働者であるが、庭師、私邸の守衛、お抱え運転手などには男性も見られる。家事労働者は、賃金労働者として、1人または複数の使用者の下で、フルタイムまたはパートタイムで働く。 家事労働者の構成は、国により、そして時間と共に変化している。しかしその数は世界中で増え続けている。先進国における家事労働の増加は、収入の格差拡大と関係していることが推測されている。一方、低所得の農業国やインフォーマル経済において、家事労働はHIV(エイズウイルス)エイズの蔓延が激しい国を中心に、さらに顕著になった。作業組織の変化、多忙となったこと、そして無償のケア労働に従事できる女性の数を減らすことになった女性の労働力率の著しい上昇が、この家事労働者増加の原因である。
 社会的、経済的に重要性が高まっているにもかかわらず、家事労働は伝統的にそうであったように、今でも、最も不安定かつ低賃金で、保護されていない形態の雇用の一つである。虐待や搾取は頻繁に見られ、子どもや移民労働者がかかわっている時は特にそうである。その年齢の低さや国籍、そして多くの場合雇い主の家に住んでいるという事実のため、言葉によるあるいは身体的な暴力に対して、特に脆弱である。最悪の場合は自殺や殺人にまで発展するこのような暴力についての報道は頻繁に見られる。
 証拠はないものの妊娠に基づく一時解雇は今でも起きており、他の種類の労働者に比べて家事労働者の間でより頻繁に起こっていることが推測される。もう一つのはなはだしい問題は、家庭は安全で脅威のない所との誤った認識のもと、ほとんどの国で家事労働者を労働安全衛生法の適用対象から除外している点である。社会保障給付は、普遍的かつ平等な医療へのアクセスや年齢に基づく年金受給資格を提供する一般的な社会福祉制度のもと
で提供されている場合が多いが、失業保険の受給支給は、ほんの数ヵ国でしか家事労働者に与えられていない。
 家事労働は伝統的に女性たちが無償で行ってきた労働を映し出しているため、価値がなく、「生産的な」経済の外にあるものと思われている。家事労働者が通常低賃金で、支払いが少なかったり定期的に報酬が支払われない場合が多いことはこれで説明が付く。さらに、家事労働者が典型的に、平均的な教育水準を下回る立場の弱いグループに属する女性で成り立っている事が、賃金を抑える働きをし続けている。
 また、家事労働者は家庭内で仕事をし、人目に触れない「目に見えない」孤立した労働者群であり、何が妥当な要求で、何が受け入れられない待遇であると考えられているかについて、支援や指導を求められる仲間の労働者がいないため、交渉力にも限界がある。移民労働者の場合は、しばしばその国の言語や現地の言葉を使うことがで
きず、家族やその他の頼れる支援ネットワークもないため、孤立の度合いはさらに高まる。


家事労働者の問題は、移民労働者の問題でもあるケースが多い…となると日本では少数かもしれない。しかし日本でも、先日都労委で、連合ユニオン東京・ブラジル領事館事件が和解できたが、この事件は領事夫人のメイド解雇だった。夫人が大晦日にも出勤するように命じたが、本人が拒否したところ即日解雇になった。おそらく、日本に住む外国人のメイドは外国人であり、そこには様々な問題が生起していると思う。また、主婦労働も家事労働と考えると、労基法の適用除外の理由にさかのぼれるということも理解した。しかし、いずれ書きたいテーマだが、日本はILO条約批准が少なすぎる…止めよう。昨日の今日で怒りが重く淀んでいる。最後にちょっと前になるが、労働弁護団の水口弁護士(幹事長)の有名ブログからの文書を紹介し、終える。

>労働契約と家事使用人(2008年8月10日)
■外国人家政婦は労働法で守られない?
 今朝の朝日新聞で、フィリピン人家政婦を雇っていた米国人に対して、家政婦が加盟した労働組合が団体交渉を申し入れたら、米国人に「労基法で保護されていないのだから、交渉の必要はない」と交渉を拒絶されたと報道されています。そして、「実情にあった法改正が必要だ」と報じられています。
 確かに、労基法は家事使用人には適用しないとしています(労基法116条2項)。しかし、労基法が適用されないからといって、団体交渉を拒絶することはできません。労組法は「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活をする者をいう」としていますから、外国人家政婦(家事使用人)であろうと、労組法上の労働者です。労基法の適用の有無にかかわりなく、団体交渉を申し入れることができ、使用者は団交応諾義務があります(労組法7条)。労基法が適用されなくとも、労組法が適用されます。また、労働契約法が適用されます。
■外国人家政婦と雇い主との関係は労働契約
 家政婦と雇い主が締結する契約は労働契約です(労働契約法2条1項)。したがって、労基法が適用されなくとも、労働契約法が適用されます。ですから、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当で認められない」限り、解雇は無効となります(労働契約法16条)。雇い止めについても、雇用継続に合理的な期待があると認められる状況であれば、解雇の規制が類推適用されます。
 労働契約法上の労働者は、「事業で使用される」という要件はありませんから、一般の家政婦も労働契約です。もっとも、労働契約法がない場合にも、民法の雇用契約でありました。
 先日、朝日新聞の家庭・生活欄の「独立して働く」というシリーズで、一人親方の労働者性の問題について、訂正記事が掲載されていましたが、この当たりの労働法の知識は、わりと知られていませんね。新聞記者の皆さんも労働法を学生時代に勉強したことのあるひとは少ないでしょうから。でも、新聞記者に判りにくい、労働法であることのほうが問題なのかもしれません。

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労基法適用除外の家事労働で外国人受入の姑息
産業競争力会議や「骨太の方針」「成長戦略」等で安倍総理が目論む「労働時間の規制緩和」に関しては、ここで書く必要もないほど取り上げられている。その一方で、不安な報道が紛れていたので紹介しておきたい。朝日新聞の6/15に「家事労働、外国人受け入れ 関西の特区、今秋にも」という記事があった。「国家戦略特区」で、外国人労働者を家事サービスの分野で受け入れる方針を固めた、という。「18歳以上、単身での入国」などの条件で、掃除や洗濯など家事の負担を減らして女性の就労を促すため、というが、あまりきちんと... ...続きを見る
シジフォス
2014/06/19 07:07

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